2008年9月10日公開
前回、第3次NZ長期旅行(2004年9月〜2005年6月)の終わりにあたり、当時、近況報告用に運営していたブログ上に現地のネカフェから次のような文章をアップしたことがありました。
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明日にはいよいよNZを離れるのですが、今のところ特に感傷的に
なったりしてはおりません。と言うのも
「そう遠くない将来の再訪を確信しているから」
だろうと思います。
もちろんこれまでのように、そのたび住む所や仕事を変えなければ
ならないような長い旅は、いくらなんでも好い加減もうムリです。
それに一夏、トラックからトラックへのトランピング三昧、言うほど
楽ではなかったです。身に沁みました。もうそんなに若くないですわ…
とは言うものの、トランピングそのものには正直まだまだ未練があります。
なので、これからは
「ちゃんとした仕事に就いて、安定的な生活を維持」しつつ、且つ
「年に2週間はまとまった休みをとってNZにトランピングしに行く」
そーゆーライフスタイルの構築を目指します。
「5年毎に仕事辞めて丸々一夏」より、「会社休んで毎年2週間」の方が、
生活の安定という観点から、より現実的なのは言うまでもありません。
それに「来年もまた来れる」という前提であれば、2泊くらいの短い
トラックを、まぁ2本も歩ければ私としては言う事ありません。
トラックの候補はそれこそいくらでも思い浮かぶなぁ…
そして1年のうちの半年は準備を楽しんで、もう半年はその年の
トランピングを振り返って、HPに記事をアップしたりして楽しむ…
なんて、いかにも楽しそうじゃありませんか。
「向こう10年でHutに50泊」と言うのが具体的な数値目標です。
この方針、−さしあたり自分では「2週間理論」と呼んでいますが−
たやすく実践出来るほど日本社会の現状が甘くないことも分かっては
いるつもりです。また、仮に実現したとして、このライフスタイルが
円満な家庭生活と両立するかどうかと言うのはまた別問題ですし…
クリアすべき課題は多いですが、それだけに楽しめそうです。
まぁ、「なんとかしたい/しよう」と、そんな風に思っています。
台湾で日本語の使えるネカフェを見付けられなければ、当ブログの
更新はこれが最後になるでしょう。
帰国後、本家HPの更新再開までしばしお待ち下さいませ…
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さて、上記の文章を書いてから丸3年が経ちましたが、残念ながらいまだ4回目のNZ行きは実現していません(今年の正月休みに予定していたのを泣く泣く中止したのは、日頃このHPをご高覧頂いてる皆様にはご存知の通り)。
仕事も相変わらず派遣社員だし、冷静に考えて「向こう10年でHutに50泊」の達成は少々難しいかも…な状況です。
でも、この「2週間理論」、まだ全然あきらめたりしてはいないのです。あきらめてないどころか、むしろ、私の人生後半戦に向けての指針になっていると言っても過言ではないのです。
今回はこの理論を成立の背景から実践の現状まで、篤と紹介させて頂こうと思います。
まず最初に、上記のブログ記事を書いた当時の心境を白状してしまいますと、
「俺ってば果たしてこんなことしてる場合なのか?」
と言うのが正直な気持ちでした。
道中、特に1人で車を運転している時など、旅を終えて帰国してからの再就職活動やその先のことなんかがふと頭をよぎったりすると、もう他のことに気持ちが向かなくなるほどひたすら考え込んでしまって、とても旅を楽しむどころじゃありませんでした。
なにしろ冷静に筋道立てて考えれば考えるほど、楽観出来る要素より不安材料の方が圧倒的に多くて、「出来ることなら今すぐ帰国して動き始めなくては…」などと無闇に気持ちばかり焦ってしまって。そんな調子でしたから、その終盤あたりには、旅ももはや苦痛になってしまっていたと言っても過言ではありませんでした。
「散々遊んどいて何言ってんだか」って感じですが。いや、もちろん遊んでるその時その時は楽しかったんですが、ふと我に返ると、決まってズゥンと落ち込みます。そのギャップに耐えられなくなったってのもあったかも、と今では思います。
ともあれ、そんな日々を重ねるうちに、つくづく思うようになりました。旅は好きだけど、自分にとっての旅とは、帰れる場所がきちんと確保されていて初めて心から楽しめるものらしいと。「あてどのない旅」ってやつは、どうも自分には向いてないらしいと。仕事とか将来とかについてアレコレ考えずに済む道中だったならば、もっともっと楽しめただろうに…と。
別の言い方をすれば、自分が「定住型」の人間なんだと認識した、とも言っても良いかもしれません。が、それはともかく、これまでは長期旅行に出るたびに仕事を辞めたり引っ越したり、まさに根無し草って感じの生活を続けてきたのだけれど、もう30台半ば、人生も折り返し地点にさしかかって、さすがにもう潮時と言うか、この先こんな生活は続けられないと、ようやく我に返ったと言うか、とにかく自分の現状を直視したと言う次第です。
そして、何よりまずは定年退職まで視野に入れた長期的・安定的な職業生活を実現しよう、つまり、正業に就いた真っ当な社会人になろう、という決意を胸に帰国の途に就いたのでした。
さて、かくして遅ればせながら現実に目覚めたものの、同時にこの旅では NZ Tramping が自分の中に「ライフワーク」としてすっかり定着してしまいました(この辺の話はまた別の機会に詳しく書きたいと思っています)。
「老後の楽しみにとっておく」なんて言って、今の折角好きになったという気持ちを抑え、情熱を封じ込めてしまうというのも詰まらない、いずれはそうしなければならない時が来るとしても、ここは今少し欲張っておこう…と、まぁ、アキラメは滅法悪い方なので。
そんなわけで、今のステータスからスタートして、なんとか向こう10年くらいを目処に最終的には「NZ Tramping という道楽と日本での安定した生活とを両立させる」、これを当面の目標に定めたと言う訳です。
とは言うものの、日本からNZはやはり遠くて、ごくザックリの計算で、往復で機内2泊、空港都市−フィールド最寄りの街との往復にやはり2泊、そして Tramping 本番に2泊3日、予備日に1泊としても、これだけでも8泊9日必要。更に2泊3日コースを2本とか、ちょっと辺鄙なルートを歩こうとか欲張り始めると、正味2週間は欲しいところです(航空券にもお誂え向きに14日間FIXってのがあることだし)。
でも、これくらいまとまった日数の休日となると、今日の平均的な日本人の労働者がとれるとすればGWと盆暮れくらい、ってのが現実でしょう。
ところが、それらいわゆる大型連休と来た日にゃ−皆さんご存知の通り−国内外陸路空路問わず宿も移動交通費も高くなるし、道中も行った先も混雑するし、そのうえ所帯でも持ったりすれば家族サービスも大切、殊に盆暮れなどは義理含みの用事もあれこれ出来したりして、ま、それはそれで楽しいとしても、連休を丸々海外旅行に費やす−それも毎年−ってわけにはなかなかいきそうにありません。さりとて、平時にまとまった日数休むなんて不可能だし…
と、ここではたと考えました。本当に不可能なんでしょうかね?
だって、労働者には会社から付与される年次有給休暇と言うものが、常雇ならば年に最低でも10日はあるわけで、これを適宜消化すれば良いってだけの話しなんじゃぁないかと。
10日間の有給を一気に使い切るとして、「週末+5日間有給消化+次の週末+さらに5日間有給消化+次の次の週末」というふうに組み合わせれば、前述のような大型連休の時期でなくてもなんと16連休も出来るじゃないですか!なんてスバラシイ発想!
…もっとも、実際には計画年休だの指定年休だの言って、労働者の有給休暇取得には何気に法制面での抑制がかけられていたりもするようなので、さすがに「16連休」なんてのは難しいでしょう。それにその年の有給残がゼロになっちゃうってのも、ちょっと心細いですし…
それでも、その半分の5日でもまとめて取得出来れば「週末+5日間有給消化+次の週末」で9日間、前後どちらかの週末に祝祭日が絡めば10日間くらいは確保出来そうですし、或いは大型連休の前後に有給を数日絡めた場合には、もう少し長い休みにすることも可能でしょう。
いずれにしても、有給をこのように都合良く取得・消化しさえすれば、余裕のある旅程とまではいかないまでも、さしあたり前述したくらいの日程での「Tramping 遠征」は十分に可能なのではないか知らん?こう考えたのでした。
さて、この辺りまでは一応、建て前上は可能ってことになってる範囲だろうと思うのですが、実際はそうそう思うようには取得・消化出来ないものらしいですね、有給休暇って。
とにかく前例がないとか、上司からの評価が気になったりとか、同僚や担当の取引先に遠慮しちゃったりとか…
でも、なにも出発前日になって急に「明日から10日間休みますネっ!」とかってんじゃないんですから。留守中の準備や段取りを念入りにしておけば、職場の皆さんにだってそんなに迷惑はかけずに済むんじゃないかと思うのです。そこは要領ひとつの問題じゃなかろうかと。
大体、この情報共有化技術の普及した時代にあって、標準的な職場で「この仕事は誰彼にしか出来ない・分からない」なんてことがそうそうたくさんあってたまるもんですか。
それに、つまるところ皆が交代でこーゆー長い休暇をとるようになれば、お互い様ってことで問題にもならないでしょう。
誰かが皮切りになって道を拓いて行かねばなりませんが、ひとたび慣習化し定着すれば、職場のシステムも仕事の進め方もそれなりに(働く人たちのニーズに適合するかたちに)変化して行くだろうと思うのです。
その結果として、まとまった休暇を、正真正銘、自分だけのために、純粋に余暇のために、(あるいは家族水入らずの時間のために、)それも毎年確保出来たら、私たち労働者の生活もきっともっと楽しくなるんじゃないかと思うのです。
また、定期的にリフレッシュする機会を持つことが、仕事に対しても意欲や緊張感、生産性、クリエイティビティなどの面で(数値化は難しいかも知れませんが)プラスの効果があるのではないか、とも思います。
近頃、政府が取り組み始めた「ワーク・ライフ・バランス」と言うのも、畢竟、そのような職場環境を作っていきましょうということなんだろうと理解しています。
話が少し大きくなりましたが、これは何も今回急な思い付きとか、政府の言い分の受け売りとかなんかではなくて、大学卒業後の十数年のうち、なんだかんだでトータル2年余りをNZで Holiday-Maker として過ごすうちに抱いた「日本人は今よりもっと余暇を楽しんで良いハズだ」という思いがバックボーンになっています。
考えてもみれば、そもそも我等が日本は、近頃は大分景気も悪くってイマイチ意気が上がらないとは言え、依然、世界屈指の経済大国です。
であればこそ、その原動力である労働者はその恩恵をもっと享受して良い筈だと思うのですが、今日びうっかりしてると定年まで働いても持ち家の一軒も建ちゃしません。
それどころか、給料は増えないのに諸式や税金は年々着実に上がるし、それでいてやたら毎日残業ばかり多いし、そのうえ少子高齢化の進行によって年金受給開始年齢=定年年齢が引き上げられることはほぼ確実…なんて厳し寂しい現実。
労働意欲や生産性が低いってわけじゃなくて、むしろ皆、自分の受け持ちの仕事はお互い惚れ惚れするほど一生懸命やってると思うんですが、それが働きぶり相応に報われているとは到底思えないのですから。
旅の道すがら、「勤続20年の御褒美に休暇が10日間まとめてもらえたので来た」という日本からのご旅行の方に幾度かお会いしたことがありました。
正直なところ「勤続20年に対して10日ぽっちの休暇で褒美のつもりかよ」と彼らの雇用先に対して内心一人で憤慨してしまいました。
と言うのも、前述のように、労働者に付与される年次有給休暇と言うのは、常雇ならば年に最低でも10日は付与されるわけで、これまた前述のように、適宜消化出来れば10連休くらいはいつでも取れるはずなんですから。そう考えれば、たかが10日間で「褒美」なんて、なに勿体付けてんだかってことになるわけです。
話が大きくなった上に少し脇に反れましたか?
まぁ、要するに「俺が気兼ねなく休めるように皆も遠慮なく休んで?」っていうことですね。
単なる個人的欲求を、なんとなく社会的な意義があるかもっぽく聞こえるお題目(と言うか屁理屈?)で正当化しようとしている気もして、我ながら牽強付会だと思わないでもないです。
でも、この考えを実践し少しでも広めていけば、自分のカタギの生活とヤクザな欲求を調和させて、且つ微力とは言え世の中のためにもなるハズ…だから、そう信じてやっていこうと心に決めたのです。これが「2週間理論」の核心部分です。
さて、折角のこの理論も、まずは有給休暇制度が機能している職場でなかったらそれこそ絵に描いた餅なんで(中小企業では有給取得なんて切り出すのも大変、なんて話も聞きますから)、とにかく、日本に帰ったら早々に就職、それも出来るだけ「寄らば大樹の陰」で行けたらな…なんてムシの良いことを考えていたわけです。が、これはさすがに甘かったですねぇ。
さる機会には、初対面の人にまで「キミは働いて食っていくという覚悟が出来とらん」なんて言われちゃったり、「なるほどそうかもな」と、腹立てる以前に変に納得しちゃったり(自覚はあるんですよ、念のため)。はははは。
そんな紆余曲折を経て流れ着いた現在の勤め先は、超安定企業で有給制度もしっかり機能してるけど、所詮「派遣社員」なんで…今の職場なり、どこかしら余力のある他の会社なりに拾ってもらえる日もいつか来るだろうと信じて、今は変にあがかず流れに身を任そう…そんな気持ちでその日その日の仕事を地道にコツコツやってる今日この頃なんであります。
さりながら、昨年のNZ行き、航空券まで取ってたのをキャンセルしたのがやはりショックで、もはや禁断症状が出始めているので、今年は派遣社員というステータスのままながら「ヤクザな欲求」の方だけ前倒し強行しようと画策しているところです。
毎年少しずつでも実績を積み上げ、いずれ既成事実化するための下地作りとして、手始めの今年は無難に年末年始休をカレンダー通り使って、目立たぬように行って来るつもりです。
万事高くつくのは覚悟の上で、もちろん周囲には万全の気配りを見せて…うぅむ、我ながら策士よのぅ。
ま、こんな風にして、ゆくゆくは(もちろん正社員になって)9月から年末年始の間に分散する祝日の絡む週末や暮れ正月休あたりを使って、毎年コンスタントに2週間前後、NZに遠征出来れば言うこと無しですかなぁ。
年によっては夏(NZの冬)なり春先(NZの晩秋)なりになることもあるかも…それもまた良し。それはそれでそれなりに Tramping は出来るし、たまには気分を変えて他の国を旅してみるのも素敵だろうな…冬のシベリア鉄道に、そうそう、イースター島にも行っておきたいし…うはー、夢がひろがりんぐ〜ですホントに。
もっとも、これが将来起こり得るさまざまなイベント、仕事とか、もっと言うと結婚生活とかと両立しうるかと言うと、それはそれでそのときになってないと分からないわけなんですけどね…そう考えるとホントに人生って楽しいなぁ。
了
▲The "Old" Te Anau YHA site; where everything began (2005/5/14)
[追記] この記事を書き上げて数日後、現在お世話になってる派遣先企業で正社員として採用してもらえることになりました。どうやらこの理論の実現にも一歩ならず近付いた…かな?と。