2022年7月18日公開



〜 これまで 〜

2019年秋に青森県八戸市をスタートし、八戸市、階上町、岩手県洋野町を経て今回が5回目の「みちのく潮風トレイル」です。現在、久慈市内を南下しているところです。

ちなみに八戸スタートから南下するのを"SOBO"(SOUTH-BOUND)、逆に南相馬から北上するのを"NOBO"(NORTH-BOUND)と呼ぶようです。

新型コロナウィルス感染症は、昨年の年末辺りには新規感染者数も一日数百人か、日によっては2ケタ程度まで減少し、ほぼ終息したかとすら思える状況でした。が、今年に入って「オミクロン」型の変異ウィルスの登場で、明らかに第6波、それも新規感染者数がピーク時には一日10万人を超える日もあるなど、これまでとはくらべものにならないほどの規模での蔓延となってしまいました。

そんな中、2月下旬にロシア軍が隣国・ウクライナに侵攻し、世界的に軍事的緊張が高まる事態となってしまいました。

この記事の執筆時点(7月中旬)で、ウクライナ領内での戦闘は継続中で、国際的にはロシアに対する経済制裁とウクライナに対する軍事支援の二本立てで推移を見守るという展開です。今のところロシアと直に干戈を交えているのはウクライナだけ(という建前)ですが、今後、周辺国はじめ欧米が直接、軍事介入するような事態になればいよいよ第3次世界大戦が勃発…という新コロどころじゃない世界的ピンチの局面となっております。

限られた報道のキャパシティの中で、ウ・ロ戦争のニュースに押されて新コロの扱いが減ったことが影響したのか、それとも3回目のワクチン接種もかなり進んでいるし、そもそも去年10月、第5波が沈静化した時点で緊急事態宣言も解除しちゃってるしで、重症化率や治療法の確立の進捗などを総合的に勘案して「ぼちぼち世の中、元の方に戻しながら様子見ようよ」的な流れになって来たのかなと思ってた矢先、3月16日に東北地方で大きな地震が発生しました。

特に内陸部では東日本大震災以来の大きな揺れとなり、東北新幹線にも大きな被害が出て運休を余儀なくされるという事態に。鉄道の大動脈、東京〜盛岡間が不通となってしまい一時はどうなることかと思いましたが、幸いGWまでには仮復旧での運航再開、GW以降に全面復旧となりました。

こうして東北新幹線の復旧を待たざるを得なかった上に、上長が4月の人事で異動になってしまい、当面、平日に有休を取れなくなってしまったりで、4月中旬を予定していた今回のMST行、GW最初の3日間に相当みっちり詰め込んだ旅程で臨まねばならんこととあいなりました。


2022年4月29日(金・祝)

朝3時起床。

昨夜、床に就けたのは23時過ぎ。万が一にも寝過ごしちゃったら目も当てられないと思うと、やはりぐっすり熟睡と言うわけにはいかなかった。

しかし荷物の準備は前の日曜日に大方済ませておいたので、ちゃんと起きれてしまえばこっちのもん。かなり早目の朝御飯をしっかり食べて、5時前には家を出る。隣のファミマでモバイルバッテリーをレンタル。

西宮05:37発のJR神戸線で出発。

新大阪駅の乗降客の姿は、少なくはないものの早朝のせいか滅茶苦茶多いと言うほどでもなかった。新幹線車内も指定席車両の埋まり具合は6〜7割ってとこ?で、それほど混んでるという感じはしなかった。道中、基本的には日頃の睡眠不足の解消に努める。

東京駅で09:08発の「はやぶさ225号」に乗り継ぐ。

ホームはなかなかの混雑ぶり。混雑整理のために大勢の係員が大わらわで奮闘している。こんな様子、ひさしぶりに見るなぁと感慨深かった。ちなみにこの列車は臨時列車のため車内販売無しとのこと。念のため買い物してきて良かった。大宮からは隣の座席も埋まり、掛け値ナシの満席らしかった。

去る3月16日の地震の被害で不通になっていた東北新幹線の復旧スケジュールがリリースされ、仮復旧の間の臨時ダイヤのチケットが4月13日(水)発売というのも把握してはいたものの、毎日、忙し過ぎてて気持ちに余裕が無く、正直、「まぁなんとかなんだろ」とたかを括ってた。で、17日(日)にみどりの窓口に行ったところ、上り(往路)が満席で取れなくて、さすがにちょっと焦った。

気を取り直して、少し前に退会した「えきねっと」に登録し直し、公式サイトで空席情報をチェックし続けること数日、運良くこの臨時列車を押さえることが出来た。一旦、仙台〜盛岡間を仮押さえしたけど、「最悪、東京〜仙台間は自由席で立ち席で2時間半か…」とけっこう悲壮な覚悟をしてたので、心底安堵した。

仙台でかなり大勢の乗客が下車。以後、盛岡まで乗降客はまばらだった。

仙台までの間でこま切れに、でも夢を見るくらいには眠った。窮屈な姿勢でだったけど、結構、充電出来た気がする。

西宮からこっち、沿線はずっと曇り空。仙台からの車窓風景は、いつものごとくやはり、季節をひと月分は遡った感じ。遠くの山々は雪化粧しているし、里では菜の花や芝桜が満開。サクラはもう散りかけている。一面に広がる田んぼには水を張り始めているところもある。

少し前の週間予報では、明日など「一時雪」だとかで。さすがにそれはなさそうだけど、朝夕は結構冷えそう。そのつもりで準備はして来たけれど、さてどうなりますか。盛岡には定刻12:45着。

JRバス「白樺号」で岩手県の広さを実感

ここで久慈までのJRバス「白樺号」に乗り継ぐ。運賃\2920也。

乗り継ぎ20分の間に駅の立食い蕎麦で軽く昼食にしたかったが、乗場確認してバスの切符買ってトイレ行ったら時間切れ。駅コンビニのサンドイッチと缶コーヒーでバスの車内で済ますことにする。

盛岡駅東口バスターミナル13:05発。

市中心部を抜けて郊外に出ると、岩手山を左(西)に眺めながら国道4号線を岩手町まで北上、岩手町で国道281号線に反れて葛巻高原、平庭高原を経て久慈市に至る、所要時間3時間弱の路線。途中、2ヶ所の道の駅で数分ずつのトイレ休憩があった。

盛岡も「花曇り」といった空模様。雨は降っておらず、岩手山の稜線はくっきりと見えた。

岩手町〜葛巻町間の沿道は牧草地が多く、サイロのある家や飼料の藁ロールがたくさん積まれているのが沿道に多く見られた。でも牛とかの姿は全然見当たらず。時季的にか時間帯かこの空模様のせいか、とにかくたまたま外に出さないタイミングだったらしく、途中「明通」バス停近くの畜舎内に牛が数頭居るのを見れただけだった。

それと、山の斜面がごっそり皆伐されている場所が多く目に付き気になった。いずれもかなりの急斜面であり、放牧地を広げるための伐採とも思えなかった。防災、環境保全の面から問題がありはしないか?

平庭高原あたりから小雨というか細雪が降り始めた。道路の両側には見事な白樺の森が広がっていた。アップダウンがかなり激しいし距離も長いので、残念ながらサイクリングやトレッキングには不向きかもと推察。

道の駅やまがたを発つと、ほどなく長いトンネルを抜け、国道は「久慈川渓谷」に入る。蛇行する久慈川沿いを幾つかのトンネルを経て久慈市郊外に抜ける。道の両側の斜面は混交林に覆われていて、雨が強くなり始めていたけれど、新緑が鮮やかに映えて雨もまたよし。時折見える満開の山桜の目の覚めるような色彩のアクセント、またよし。この景色のためだけにでも足を運ぶ値打ちありと感じ入った。

市街地に入ると一気に空が拓けた。久慈駅前に定刻15:55着。

久慈は冷たい雨。スマホで調べたら現在気温1℃。そりゃ寒いわけだ。

それにしても長い道中だったなぁ。朝からほぼ連続10時間超の陸路移動、特に「白樺号」では岩手県の広さを思い知った気分。初めて乗ったってことも相まって強く印象に残った。

「久慈サウナ」に行ってみた

まずは常宿「久慈第一ホテル」にチェックイン。素泊まり5800円也。

荷解きして、しばらく部屋で休んでから、グーグルマップで市内のロケハンをしていてたまたま見付けた「久慈サウナ」に行く。

ホテルから見て駅の向う側の、2Fと3Fに居酒屋「つぼ八」の入ったビルの、二人しか乗れない小さなエレベーターで上がった4Fの1フロアをぶち抜いた入浴施設(男性専用)。入湯料1000円也。

サウナと水風呂、普通の大風呂、洗面台、シャワーなどなど設備は平均的だったけど、サウナは広め且つ温度かなり熱め&水風呂は水量豊富且つかなり冷たくて贅沢な感じ。サウナマットはセルフで交換可らしかったし、休憩スペースが広くとってあって、ゆっくり休めるデッキチェア(近頃言うところの「ととのい椅子」?)が数台に、冷水のサーバーも置かれているなど、過不足なく行き届いている印象。サウナにテレビあるのがちょっとイヤかな?でも無いとちょっと寂しいかな?というくらいサウナ室が広かった。

もとは飲食店だったことを伺わせる内装とレイアウトが独特の昭和テイストを醸し出していて好みが分かれそうだけど、ま、今日は「昭和の日」だしそれも一興、と、むしろ楽しみつつ、このところ溜めに溜めてた仕事のストレスと、今日の長躯の疲れを癒さんとした。

かなり効いた。体も気持ちも軽くなった。次回も是非また来ねば。

夕飯には前回同様「蛇の目寿司」に行ってみたけど、団体の予約が入っているとかで、そう言えば暖簾も出てなかった。あっさりあきらめて、こちらも前回も寄ったホテル近くの「寿々喜」を掘り下げることにした。

こちらも席が埋まってるっぽくて、入口で逡巡していると、カウンター席で連れと飲んでた常連と思しきおっさんが、奧の方のレジ横に空いてる席を指さして手招きしてくれた。

一人呑みはこーゆー時、楽で良い。そして旅先での一人呑みは、地元の人のこーゆーささやかな気遣いがありがたくほっとする。

座敷席は連休なんでひさしぶりに集まって飲んでるって様子の若者連中や地元のカップルとか、カウンター席は地元のおっさん達、出張中のサラリーマン風の二人組とかで、総じてワイワイと居酒屋らしく寛いだムード。

旅先で入ったお店で、こんな風に地元の人たちの方言全開の会話やテレビのローカルCMなんかを肴に飲むのは愉しい。

しっかり飲んで食って、近くのローソンで明日の食料を調達してから宿に戻って、そのまま寝てしまう。サウナと呑みとでようやくしっかり旅モードに切り替わったかな、という感じ。

2022年4月30日(土)

朝、3時にアラームで起きて、4時過ぎまでかけてぼちぼちと起動。

朝食はホテルの朝食ビュッフェが食べたかったのだけど、時間が合わないので今回は諦めた。コンビニのおにぎりとバナナ、それに部屋の電気ケトルで沸かしたお湯で、カップスープで済ませる。

スマホでチェックすると天気はおおかた昨日の予報通り、一日中晴れ、ただし気温は低め(最高13℃最低1℃)とのこと。

昨日、サウナに行く前にホテルのフロントでタクシーの手配を頼んでおいた。7時過ぎには小袖海女センターに着ける段取り。

6時25分、タクシー迎えに来る。ちと耳の遠いらしい老ドライバー。でも運転はスムーズで安心。前回はどんよりした曇り空の下を歩いた小袖漁港に向かう海沿いの険しい道、今朝は良く晴れて、海も朝日を浴びてキラキラと美しい。前途に期待しちゃうなぁ。

小袖海女センターには6時45分頃着く。道も–険しいとはいえ–空いていたし。タクシー代はメーターで2960円也。もっとかかると思ってた。

もともとの計画では、早めの三陸鉄道で陸中野田に行き、久慈行きの路線バスに乗れば、やはりこのくらいの時間に着けるって目算だったんだけど、このバスが平日しか運行してないので、日程がGWに変ったことでタクシーしか選択が無くなったのだ。バスの休日ダイヤだと始発に乗っても朝9時着とかで、それから陸中野田まで歩くのに8時間〜9時間かかるとすると、終盤がかなり苦しくなる。ここまでの経験上、沿岸地方は一旦陽が落ちるとあっという間に真っ暗になるからなぁ。

赤磯大明神にお参りを済ませてから出発。ちょうど7時。

海女センターのすぐそば、「みちのく潮風トレイル」(以下「MST」と略)の標識の脇から断崖の上の集落に抜ける坂道を登っていく。

高台の監視小屋から北の方、久慈湾を見渡す写真を1枚撮る。文句なしの絶景。小袖第2トンネルの上にある天狗神社にもお参り。ここも眺め良し。

小袖漁港・漁業監視所からの眺め

【画像】小袖漁港・漁業監視所からの眺め

しかしまだ7時回ったばかりなのに田舎の朝の早いことよ。犬と散歩中のお母さんや、マイカーの手入れを始めてるおじさんやらに軽く挨拶しながら集落を抜ける。

集落の外れの車道の脇、ガードレールの切れ間にMSTの標識。「陸中野田駅13.4km」とある。標識からはいきなり急斜面を下るが、階段が設置されていて有難い。ここから林の中の非舗装区間に入る。

コナラ、ブナ、マツ、スギ、ホオなどの混交林。歩き始めてしばらくは時間的・地形的にずっと日陰で、昨日の雨の名残でしっとりひんやり落ち着いた雰囲気。この先しばらくは人とも会わないだろうからと、マスクを外して深呼吸。あー、フィトンチット?森林浴的な気分の良さ。

これで頭上の車道から投げ捨てされたゴミが視界に入って来なけりゃ言うこと無いんだけどな。MSTに限らず、道楽であちこちの田舎道を歩いてみてるけど、車道や生活道路の近くはゴミが多い。通りすがりのドライバーのか地域の住民のか或いは双方の仕業だろうが、空き缶やコンビニのビニール袋に入ったもの、野菜の屑やら洗剤の空きボトルやらの明らかに家庭ゴミってなもんも見かけることがあるからなぁ。興覚めだからホントやめて欲しい。

8時頃、MSTの標識「陸中野田駅12.1km/小袖海女センター2.1km」に到着。目立たないが地形的には岬の様になっていて、周囲の木立越しに海の眺めが広がっている。体も暖まって来たのでここでフリースを脱ぐ。

ちなみに今日の服装は、上半身はアウターのソフトシェル(ウィンドブレーカー程度の薄手のもの)の下にフリース、その下はジオラインの速乾性の長袖Tシャツ、というレイヤード。指先を切った薄手の手袋も。下半身は半パンにレギンズ、下着はこれもジオラインのトランクス、厚手のソックスにハイカットの3シーズンのブーツ。足回りの保護のため履いている膝丈のロング・ゲイターと帽子以外は全部モンベル製だ(ゲイターはマックパック、帽子はパタゴニア、いずれも長年愛用しているもの)。

これらの取り合わせで終日、快適に歩けた。宮古に着いた頃にはすっかり陽が落ちていて、少々肌寒いほどだったことは付記しておく。

オニゼンマイ(らしい)

【画像】オニゼンマイ(だと思う)

8時半頃、今日最初の「沢」に差し掛かる。「沢」と言っても、昨日今日くらいの天気であれば水量は気にするようなものではなくて、「春の小川」程度の細い流れでしかなかった。

問題は、沢を超えるためのトレールの地形の方だ。尾根筋または海岸段丘の比較的フラットなトレールから、沢の一番底まで80メートルくらいを急激に下って、また急激に登る。こんな高低差が何ヶ所もあるのが今日の区間の特徴。トレイルマップにはそうした沢に「増水に注意」と付記され、かなり正確に記載されていて感心した。

整備が相当行き届いてはいるが、急な下りは膝に来るし、急な登りは軽い荷物にも関わらず10歩行っては息を整え、一気に登りきることなど到底かなわない…が、その実、「体力落ちてるなぁ」これが一番の問題だな。

3つ目の「沢」に差し掛かると、冷蔵庫やら本体は原形を留めていないが原付のものらしい錆びたエンジンやらがゴロゴロしていたので「つまりこれは車道が近いってことだよな」と考えつつ歩いて行くと、果たして舗装道路に合流した。ここで9時。

つづら折りの車道を降りていくと、「三崎漁港」に到着。小休止。ここにはバイオトイレ(おが屑を利用した生分解式トイレ)が設置されていたので借りた。小休止。漁港には船の姿は無いが、カブに乗った地元のお母さんが現れた。9時20分に再スタート。

先ほどの舗装路への合流点の車道を挟んで反対側、急斜面に階段が掛けられている。トレイルマップに「滑落注意」の付記がされているところをみると、この階段が設置されるまでは、この斜面をどうにかして登らなければならなかったようだ。よく見ると、かつての踏み分け道の痕跡が見て取れた。

三崎漁港近くの急階段

【画像】三崎漁港近くの急階段

階段の登り口に、利用者数調査用のカウンターがあり、「0000」だった。押して「0001」にしてから上り始める。

ここから三崎までの間は、アップダウンは割と緩やか。何ヶ所か風倒木でトレイルが塞がれていたが、迂回したり跨いだりくぐったりしてクリアしていくが、雨天時などは足を滑らせたりのリスクに用心が要るだろう。

トレイルを妨げる風倒木

【画像】トレイルを妨げる風倒木

「三崎」のMST標識「陸中野田駅8.7km/小袖海女センター5.5km」に到着したのは10時半頃。正午着を想定していたのでかなりいいペースだ。

三崎は、三陸鉄道で言うと北は久慈、南は陸中野田の間の大きく太平洋に張り出した陸地の東端にあたる岬である。

標識から5分ほど、手すり代わりのロープ伝いに岬の突端に向かって歩いて行くと、漁業監視所の建物があった。長年使われていないっぽい感じで、岬の突端の猫の額ほどの平地に窮屈に建てられていて、眺めは良いけど落ち着いて腰を下ろせるようなスペースも無い。想定通り正午着ならここで昼食にするつもりでいたのだけれど、ちょっとだけ長めに休憩して先を急ぐことにした。再スタート11時。

なお、監視所の建物裏に小さな鳥居と「猪鼻明神」と彫られた碑あり。小袖の天狗神社と、この先の久喜浜の恵比須神社の間で見かけた唯一の信仰的な施設(と呼ぶにはあまりに簡素なものだったけど)。

三崎から北方を望む

【画像】三崎から北方を望む

ここでひどく道に迷い、林道?作業道?を行ったり来たり藪に踏み込んでみたりしているうちに1時間ほどロスしてしまった。結局、先ほどの三崎のMST標識まで戻って辺りを見回してみると、標識の脇に正しいルートの入口を発見。落ち着いて見れば「そりゃそうだよな、ここにこうなけりゃおかしいよなぁ」って感じで…うーん、不注意だった。ともあれ、正午ちょうどに再スタート。折角のアドバンデージをみすみす失ってしまった…

昼を回ってさすがにいささか暑く感じられてきたので、このタイミングで上はTシャツだけになった。

三崎から南は、トレイルマップには「注意!」マークが所狭しと並んでいて、断崖上のとんでもない難行を覚悟していたのだけど、実際にはそれまでと大して変わらず、確かに「沢」の前後のアップダウンも頻繁だし、風倒木に遮られている場所もあるにはあったけど、頭上は木立に覆われて、木漏れ日もいい塩梅に柔らかで。

そこかしこで山桜はまだ満開か散り始めくらいで、目を足元に転じれば名も知らぬ野の花が満開のお花畑だったり。また、特に傾斜の緩やかなところではホオやマツなどさまざまな木々の枯葉が積もっていて感触もやわらかで歩くのが本当に気持ち良い。「山笑う」ってのはこんな感じのことかな。

自撮り

【画像】自撮り

潮騒に、今日はずっとなにかしらの鳥の鳴き声が聞こえていて耳にも楽しかった。ウグイス、ホトトギス、あとはシジュウカラとかかな。三崎の辺りでは2、3回、リスがトレイルを横切るのにも出くわした。今回はクマよけの鈴をバックパックに提げていたのだけど、それが自分のステップに合わせてリズムを奏でいるのもまた面白かった。もちろん、木立越しに広がる太平洋の眺めも「何にたとうべき」。

やがて前方に新たな大きな湾の眺めが開けてきた。

今回の難所区間ももう終わりが近いな…と思いながら歩いて行くと、MST標識「陸中野田駅6.3km/小袖海女センター7.9km」に到着。13時45分。

松の木立ち越しに久喜浜の海岸線が見える。ここからは尾根伝いを急激に下っていく。そして最後、急な断崖に鉄パイプを組んだ階段を設けてくれてあるのを使わせてもらって、久喜浜の外れに降り立つ。

MST標識「陸中野田駅6.0km/小袖海女センター8.2km」到着14時。

全然そんな感じはしないのだけど、もうほぼぶっ通しで7時間、歩いて来たってことだな。我ながらなかなか頑張ってるなー。

久喜浜の波打ち際

【画像】久喜浜の波打ち際

久喜漁港にはたくさんの小さな漁船が引き揚げられていて、そこかしこで漁具の手入れか?地元の方の立ち働く姿も見られた。防潮堤の大きな閘門をくぐって久喜の集落に入る。

集落の中ほどには恵比須神社がある。グーグルマップで事前調査中に見付けていて、是非、お参りしたいなと思っていたのだけど、古くからの漁村にはありがちかもなんだけど、とにかく道が複雑に入り組んでいてどこから行ったら良いのか分からない(そんなとこも好きだ)。

スマホ片手にうろうろしていると、地元のお母さんが訝し気に「どごいくの?」と声を掛けてくれたので、かくかくしかじかでと事情を説明すると、神社への裏道の入口まで案内してくれた。

正面に鳥居のある参道もあるのだけれど、「階段がこわぐってね、こっちの方がいいの」と仰る。海に正対した神社にお参りを済ませてから参道を下ると、なるほど急だし一段々々が高さがあって。おじいちゃんおばあちゃん方には「大変急+危なっかしい+疲れる」とゆー意味で「こわい」って仰ったんだなと推察。

恵比須神社からの久喜浜の眺め

【画像】恵比須神社からの久喜浜の眺め

防潮堤際の車道まで下って、久喜浜のバス停から再スタート。

ちょうど15時に集落への道と県道268号線との分岐を通過して、野田村に入る。久慈市よさらば。

目標は陸中野田駅に16時到着、この先はずっと車道沿いだから1時間あれば着けそうだけど、もう寄り道してる余裕は無いな。三崎でロスした1時間がここに来て痛い。県道268号線を地元の人の車の往来に気を付けながら淡々と歩いて行く。

前方で波に打たれている断崖に、はっきりと地層の縞模様が認められる。「大唐の倉」(だいとうのくら)といって、縞模様は凝灰岩の地層だそうだ。潮が低ければその断崖の下の波打ち際を歩いて野田漁港に抜けることが出来るのだけど、今回はちょうど満潮のタイミング。歩く(=仕事休める)日程と、潮の干満のタイミング、うまく合わないと残念なこともあるんだよなぁ。残念ながら内陸の県道沿いをこれまた淡々と歩いて行く。

久喜浜と大唐の倉(だいとうのくら)と

【画像】久喜浜と大唐の倉(だいとうのくら)

県道と野田漁港の分岐。15時15分着。MSTのオフィシャルな本線はここから少し内陸に巻いて行く感じなのだけど、ショートカットする。

さんてつの高架をくぐって、国道45号線に合流すればほどなく陸中野田駅に至る。到着15時50分。今回はこれをもってゴールとする。

おおかた計画通りに歩けた。天気も良かったし言うこと無し!途中1時間のロスも、まぁ誤差・想定の範囲内、ということにしておこうではないか。

駅に併設の道の駅と産直でお土産ショッピング。駅前にはマイカーでドライブの家族連れが何組も。皆さん、「のだ塩ソフトクリーム」がお目当てらしく、売場の前には軽く行列が。停まってる車のナンバーも、岩手、盛岡、宮城、神戸(!)と、大型連休らしいシーンを見た気がする。やっぱりこうでなくっちゃな。16:27発のさんてつで宮古へ。

さんてつの車内は、地元の人と観光客、半々くらいな印象だった。程よい疲労感と列車の揺れでウトウトまどろむうちに宮古に到着すると、既に夜の帳が降りていた。

すっかり常宿の「ホテル宮古市ステーションヒルズ」にチェックイン。素泊まり7280円也。ひと風呂浴びて一服してから、今回も「居酒屋笑びす」で晩ご飯呑み。

今回は瓶ビールでスタートし、日本酒、揚げ(カキフライ)、焼き(たこさんウィンナーの陶板アヒージョ)、活け(刺身盛り)と〆のお茶漬け…とフルコースで。もっといろいろ食べたかったけど、もうお腹一杯。「食べれなくなったよなぁ」などと思いつつ、宿に戻るとすぐ寝た。

2022年5月1日(日)

起床4時半。昨夜、コンビニで買っておいたサンドイッチと野菜ジュースで軽めの朝食。荷造りして6時前にチェックアウト。

ホントはいつものように宮古駅の立ち食い蕎麦を食べたかったんだけど、7時開店だから今回は諦めた。今日は早めに大槌まで行って、出来れば赤浜まで足を延ばしてから、釜石経由で盛岡に出て、新幹線を乗り継いで今日のうちに西宮まで戻るという目一杯詰め込んだ旅程。頑張っていこう。

さんてつ宮古06:10発・大槌07:14着。運賃1240円也。

まずは小槌神社に参詣。それから城山公園に上って、街の様子を俯瞰。

おしゃっちのセブンイレブンでトイレを借りてついでに軽く買い物。そろそろポツポツ降り始めた。去年、春に来た時と同じような空模様だな…

さんてつのガードをくぐって、大槌稲荷神社に参詣。境内ではウグイスが良い声で鳴いている。前回はここで引き返したが、今日は余裕とまではいかないが時間はなんとかありそうだ。

計画通り赤浜まで足を延ばし、9時半頃、蓬莱島弁天社に参詣。大槌稲荷神社からは徒歩で30分ほどかかったろうか。

これも予定通り、赤浜1丁目停で10:29発の路線バスに乗る。おしゃっち前停で降りて運賃290円也。おしゃっちの駐車場でしていた催事で昼飯用にウニめし買う。1パック500円也。大槌駅に着いた頃には雨はとうとう本降りの様相。滑り込みセーフって感じ。

蓬莱島から大槌町中心部を望む

【画像】蓬莱島から大槌町中心部を望む

ボランティアに参加していた頃から、もう幾度と無く通った道。復興事業のいろいろな工事で、来るたびに沿道の様子は変わっていったけれど、ひとまず現在のこれが一旦の「完成形」ってことなのかな?漁港にも大小さまざまな漁船が居り、そこかしこに漁具の手入れをしたり立ち働く人の姿も見かけた(空模様もいまいちだったし、休日だったしし、時間も遅かったりしたから。普段の早朝などはもっと賑わっているのかな?)東大の海洋研究所の建物も古いものは取り壊されて、こじんまりと新築されていた。大槌駅から眺める海沿いの防潮堤とその周辺も、去年はまだあちこちで重機が動いていていかにも工事中という眺めだったけれど、今や既に工事は終わったようであった。次、来た時には、きっとまた少し変わってるんだろうな。

さんてつ大槌〜釜石でJR乗継・盛岡まで。2770円也

盛岡着・定刻。

駅のコインロッカーに大荷物を預け、沢内甚句「ももどり食堂」で遅めランチ&飲み。最初は「もひとつ調子出ないなぁ」と思ってたけど、飲み食べ始めたらむしろ止まらない。脂と肉を避ければお酒自体はなんぼでも、か?

日曜日だから?坂本酒店がお休みなので、今回は敢えてお酒のお土産は買わず。さらに木伏緑地のトレジオンに行って、軽く飲んでコーヒーで〆て、ちょうどいい頃合いに駅に戻って、一昨日逃した駅の立ち食い蕎麦屋のかけそばで〆て、今回やろうと思ってたことはひと通りクリア。さぁ、帰ろう。

東北新幹線は見たところ指定席は満席。旅行か帰省か、人のこと言えないけど、とにかく大きな荷物持ってるお客さん多し。復旧工事に関係して減速区間もあったりで、うぅ、いつになく東京が遠い(泣。足もお尻も痛いこと。

東京で乗り換え。席に荷物を置くと、すぐさまトイレ個室に入ってパッチとフリースを脱いだ。東北新幹線に比べて全然混んでない。隣もずっと空席で、気兼ねしなくて良くて助かる。他の乗客たち、殊に若い女性客は一様にディズニー帰りっぽい印象。先入観もあるかもだけど、当たらずとも遠からず、と言ったところではないだろうか?

東京からの新幹線は新大阪23:45着。明石行きの最終で西宮に着いたのは日付変わって00:20。

最後にあとひと片付け。借りてたモバイルバッテリーを隣のファミマで返却。00:35帰宅。今回のミッション完了。

しかしまぁ、今回はおおかた計画・計算通りに動けて、その点は満足なんだけど、いかんせんしんどかった。タイト且つ詰め込み過ぎた。

なにせ、これで荷解きもせずに風呂だけ入って6時間弱寝て起きて朝から丸一日フツーに仕事だかんなー。その気になればこのくらいは動けると確認出来たことは収穫だったけど、今後はなるべく余裕ある旅程を組みたい。

今回は歩けたのは距離にして正味14〜15キロ、まぁ、旅程がタイトだったからこれ以上は望むべくも無いか。けっこうな難行を予想したけど、ハードさとしては去年の春歩いた高家川〜侍浜〜麦生集落区間と同じくらいだったかなと思う。気を付けてさえいれば決して危険な区間ではなかった。また、装備をなるべく少なめに抑えたことも奏功したように思う。

次回は今秋、陸中野田駅からのスタート。玉川野営場でキャンプ泊もしたいし、釜石まで下ってSL銀河にも乗りたい…また旅程の計画に頭を悩ますことになりそう(嬉し楽しい)。

つづく