2001年3月10日公開
旅行者の立場から見たNZの大きな特徴、それは「超」の付く高級ホテルから野宿同然の僻地のキャンプ場まで、旅のスタイルに応じてさまざまな宿泊施設を選択できる、という点です。
中でも特に注目したいのはキャンプ場の多さです。街中にも郊外にも無数のキャンプ場があって、リーズナブルな料金で利用できます。テントを装備に加えてこれらのキャンプ場を活用することで旅の景色も大きく幅が広がります。
<NZのキャンプ場事情>
キャンプ場のタイプは大きく二つに分けられます。
ある程度の規模の街の中や近郊のキャンプ場であれば、たいていは事務所があり常駐の管理人がいて、滞在者に対する配慮がよく行き届いています。
バスやアクティビティの手配はもちろん、キャンプ場気付で郵便物を送れば一定期間預かってくれますし、最近ではインターネットを利用できる場合すらあるようです。
また、たいていは電子レンジや冷蔵庫まで備えられたキッチン、トイレ・シャワー、コインランドリーなどの施設が敷地内に設けられていて、宿泊者が自由に利用することが出来るようになっています。
一方、DOC の管理しているキャンプ場は、国道などのメインルートや大きな街から離れていることも多く不便な場合が多いです。しかしそれだけに混雑や喧騒から離れて自分だけの時間を過ごすことが出来るという利点があります。
1泊4〜5ドルの料金を "Honesty Box" という箱に投入する自己申告制。設備はトイレと水道のみで、常駐の管理人や事務所は無いことが多いようです。
いずれのタイプにしても敷地は広くよく整備されており、テント泊に不慣れなアウトドア初心者(まさに私がそうだったのですが)であってもそこそこ快適に過ごせるようになっています。
市販のガイドブックでは大きな街のキャンプ場の情報しか手に入らないことが多いようです。現地のインフォメーションセンターやDOCのビジターセンターで地元の情報をまめにチェックすると良いでしょう。特にDOCのキャンプ場には穴場が多そうなので、チェックしてみる価値はあるでしょう。
<私のテント>
…といった事情を踏まえて迷いに迷った挙句、私が日本で調達した装備はモンベルの「ステラリッジ1」。1人用の自立型ドームテントで、一応通年仕様の山岳モデル。
収納時のテント本体はシュラフよりコンパクトになり、パッキングも余裕。上位機種(?)の「アルパインドーム」がゴアテックス製なのに対し、ナイロン製のボディは廉価版という感が否めませんが、近所のアウトドアショップで2割引で買えた事、重量も約2kgと軽いことなど考えると、まずまずのコストパフォーマンス。
さて肝心の使い勝手はというと、はっきり言って「もう一回り大きい方が良かった」。
内部床面積は 100cm×200cm と、ちょうどシングルベッドくらいの広さ。これは身長170cmちょいの私が、テント内でやっと背伸びが出来る程度の広さでしかありません。
フライシートとテント本体の間、入口開口部のいわゆる「前室」というスペースがほとんどないので、ブーツなんかもテント内に入れなくちゃいけないし、70リットルのバックパックもテント内に入れるとなると、さすがに狭い!
荷物の軽量化を狙って1人用を選んだけれど、テント生活の快適さを考えると多少重くなっても大きめのモデルを買っといた方が良かったなぁと思います。
設置と撤収のラクさはさすが。
テント内のセッティングは、まず一番下にサバイバルシート(断熱素材製の薄いシート)を敷いて、その上にビニール製のレジャーシート、更にその上に全身用のテントマットを敷きました。夏とは言え朝夕は冷える事もあったので、これもモンベルの3シーズンシュラフに、ゴアテックス製のシュラフカバーを使う事もありました。
ちなみにこれでも不充分で、シュラフカバーとシュラフの間に古新聞をはさんでしのいだ夜もありました。
周りのキャンパー達がしていたように、工事用のタープ(おなじみ青ビニールシート)をテント下に敷いたほうが良かったのかもしれません。ただシートが思いのほかかさばるため敢えてパス。
特に南島は真夏でもかなり冷え込む日があるので気を付けたいところ。次に行く時はなんとかダウン製のシュラフを持っていきたいものです。
<テントライフの利点と楽しみ>
バックパッカーズやYHで裏庭などをテントサイトとして開放しているところも少なくありませんが、こういった宿では特にテントは重宝します。
なぜかと言えば、部屋に泊まるより安い料金で個人的空間を確保出来るからです。ドミトリーだと同室の客にどうしても気を使わなきゃならないし、イビキの大きな人と同室になったりするとちょっとした災難ですし…もちろん自分のイビキが気になる人にもオススメです。
また Queenstown などメジャーな街になると、観光のピークシーズンには事前の宿の予約が欠かせません。宿のとれるとれないが旅のスケジュールに影響してきたりするのです。
でも前述のように、たいていの街にはキャンプ場があります。テントサイトまでが満員になる心配はまずありません。テントを持っていれば宿の手配に煩わされずに気ままに移動できるわけです。
また、テントを装備に加えることでトランピングの幅も大きく広がってきます。Hut と無関係にコースを自分で設定できるようになるからです。もちろん場所によってはテントを張るのが禁止されている場合もあるので事前の確認は欠かせないのですが。
さらにキャンプ場ならではの楽しみというのもあります。
キッチンやトイレ・シャワーなどが完備されているし郵便も届くし、と、日常生活にも何ら不便がないため、キャンプ場に住んでいる人もいます。
引退した老夫婦がキャビンをさまざまな鉢植えで飾ったり、フルーツピッカーなどの季節労働者達が短期のアコモデーションとして利用していたり。一冬かけてハウスバス(バスやトラックを改造した自家製キャンピングカー)を作っている人もいました。
バックパッカーズなどの宿ではあまり見かけないタイプの「生活者」、あるいはより気の長い「旅行者」と触れ合うことの出来る場所でありました。
とはいえ、雨や風の日にはテント泊も辛いもの。屋内泊とテント泊を上手く使い分けて、快適な旅の住環境を実現しよう、と言うわけです。
<次はどのテント?>
帰国間際にクライストチャーチのYHAで会った日本人トランパーさんの話。世界中あちこち歩いているらしく、いろいろ目からウロコの話が聞けて非常に参考になったのですが、その彼曰く、
「自立型はどこでも張れて便利だけど、テントサイトを吟味しなくなる。ペグ式だと張れる場所が限られる分、より良いロケーションを探そうとする癖がつくので、結果としてより良い風景を楽しめたりする」
なるほど一理あるなぁ。
よっしゃ、次回は一丁フンパツして現地で Macpac か Fairydown あたりのテントを買うかな?あ、でも高いんだよな…
などなど、次の旅のことをいろいろ考えるのもまた楽しいわけで。