2001年4月14日公開
※本文中の制度・料金等は1996〜1997年頃のものです。
NZで迎えた最初の冬は、スキーをしたりレストランで働いていたりと Queenstown 界隈だけでそこそこ充足してしまっていたので、あまり活発に街の外に出ることもありませんでした。
でもスキーシーズンが終わって春になったら、街を出てあちこち動き回るつもりでいました。NZを旅行するなら春から夏の間が最高だと聞いていたので。
そんなわけで9月後半くらいから車を買おうと思ってあちこち物色を始めました。
新聞の中古車売買の広告や、街のあちこちの掲示板をチェックしたりと、しばらくは良さそうな物件探しに腐心しました。
しかしながら小さい町と言う事もあってか街の周辺ではなかなか出物も見つからず、と言って他の町までわざわざ遠征するのも面倒、あちこち電話したり見知らぬ人と交渉したりするのも億劫…てなわけで結局、フラットメイトのトニーが帰米するのに合わせて彼の車を買い取る事にしました。
トニーは最初2300ドルくらいで売るつもりだったらしく、そんな張り紙を出していたのを見かけたこともありました。でも結局買い手が現れず、私に売る事にしたようです。
それに彼の車には車検と登録の期限が近付いていて、買い取ってからすぐに更新の手続きをせねばならず、それに多少のコストがかかることも分かっていました。
実際かなり迷いもしましたから、彼の目には煮え切らない態度に映ったのかもしれません。それでもそんな態度が却って効を奏したのか、結局1000ドルまで売り値が下がりました。
今思うと、目一杯引っ張ればもっと安くなったかも知れません。
当時私はMTBを一台持っていたので、ルーフキャリアを付けてもらって最終的には1350ドル。もっと大きな車をもっと高い値段で買うつもりでいたので、思いがけず安く上がったなぁ、というのが当時の感想でした。
<JT9280 Mitsubishi Mirage 1980>
さてその車と言うのは、三菱ミラージュ。ナンバーは "JT9280"。
キーと一緒に受け取った LTSA(Land Transport Safety Authority)の書類(名前は忘れてしまったけど)には "Mitsubishi Mirage 1980" とあります。
1980年製なのか1980年にNZに輸入されたのか、どちらだったかは忘れてしまいましたが、車齢は実質20歳といったところでしょう。ちなみにNZではこれくらいの車齢の車はちっとも珍しくありません。
3ドア車で、車内で寝るにはちょっと小さいかもとも思ったけれど、何回か助手席に乗せてもらったりして結構元気良く走る事は知っていたので、下手なものを掴まされるより確実だろうと思って買い取る事に決めたのでした。
<名義変更>
Registration(略して"Reg." 後述)の有効期限はまだ1ヶ月ほど残っていたので、そのまま乗っていても問題は無かったのですが、せっかくですから全部手続きを済ませて完全に自分の物にしてしまおうと考えました。
そこでまず名義変更をしました。
先ほど少し触れた LTSA の書類には、所有者の名前だの住所だの車のナンバーだのといったデータが書き込まれていて、これ一枚で所有者の変更やら廃車やらの手続きが出来てしまうというスグレモノ。
これを持って郵便局に行き、置いてある "Notice of Change of Ownership"という用紙に必要事項を記入し、窓口で経費(9.2ドル)を支払って手続き終了。
仮の Registoration Card(名刺大のシール)をくれるので、車のフロントガラスの良く見える位置に忘れずに貼っておくこと。
国際免許証も持って来ていたので、これで当面は運転に支障無し。話には聞いていたけれども、実際手続きはかくもシンプルで、旅行者でも気軽に中古車を買うことができると分かりました。
<車検と登録の更新>
名義変更を済ますと、「善は急げ」というわけですぐに他の手続きにも着手しました。
まず日本のいわゆる「車検」にあたるのが Warrent of Fitness (W.o.F.) です。
有効期限は例外なく6ヶ月。つまりNZを走る車は、新旧を問わず半年に一度は車検を受けなければならない、ということになります。
この検査をパスすると V.I.C.(Vehicle Inspection Certificate)という書類をくれるのですが、これがないと正規の登録が出来ないので、なんとしてもパスしなければなりません。
とはいえ日本のそれに比べると検査の内容は非常に簡単で、費用(25ドル)も安いものでした。ただし、修理の必要な個所については実費がかかります。
そしてこれがクセモノだったのですね…。
整備工場にミラージュを持って行き検査を頼むと、整備士さんが
「右前のウィンカーの調子が悪いからアッセンブリーごと交換しなきゃなんないし、その他もろもろで100ドルくらいはかかるね」と。
エンジンやミッションの点検整備まで含めての値段なので「まぁ妥当なセンか?」とその時は思ったのでした。
ところが後日電話すると、次々に整備個所が出て来てしまいました。
まずリアタイヤを左右とも新品に換えなければなりません。
新古品が1本52ドル2本で104ドルに工賃はサービス。
それから大きかったのがボディ下面のサビ。
W.o.F. はサビについてかなりうるさくて、ボディやドア、フロア等にサビがあるとまずパスしません。これを修理するのに板金工場に頼んだところ、なんと380ドル。
ここまでで既に車体込みで2000ドル近くかかっています。
整備士さんの「外見は結構きれいだけど、下面はまた別の話だねぇ」というコメントが印象的でした。
これらを泣く泣く支払ってようやく検査をパス出来たのでした。
次に V.I.C.を持って再び郵便局です。
Regstration の手続きをします。有効期限は6ヶ月または1年。
Registration Fee は6ヶ月で82.65ドルでした(1年の場合の金額は失念してしまいましたが…)。所定の用紙に必要事項を記入し、窓口で料金を支払うだけで手続き完了。これで晴れて天下の公道を走る事が出来るようになったわけです。
後日 LTSA から正式な Registoration Card が届くので、これをフロンドウィンドウに貼り付けます。
<任意保険とAA>
さて、公的な手続きは完了したものの、安心して走るにはまだやらなきゃならないことがあります。任意保険と Automobile Association (略して "AA"。日本のJAFにあたる)加入です。
AA は Dunedin のオフィスに電話をして申し込み書類一式を郵送してもらい、記入して返送したら後日会員証やパンフレットなんかを送ってきました。
当時は「転ばぬ先の杖・安心料だな」くらいに考えていたのですが…
任意保険については、街に数件ある保険会社を直接訪ねて契約内容や保険料を調べました。型式の古い中古車の場合、フルカバーの保険(事故をしたとき相手と自分、双方の損害をカバーする)は普通使わないらしく、"3rd Party Only" という条件を薦められました。これは事故の際、相手側の損害だけをカバーするもので、自分側の損害はカバーされません。
「じゃぁ車はしょうがないにしても自分の怪我なんかはどうなるんだろう」と心配になったので、契約している旅行保険会社の窓口に問い合わせてみました。自動車事故の傷害治療費は「旅行保険でカバーされる」とのことで一安心。
NZでは、自動車事故の傷害治療費は ACC(Accident Rehabilitation & Compensation Insurance Corporation)という機関が負担してくれて、その費用が Registration Fee に含まれるかたちで徴収されている、ということを知ったのはずっと後になってからのことでした。
任意保険は結局 3rd Party Only、期限は12ヶ月で241.9ドル。Excess(免責)250ドル=250ドルまでの損害については自分で支払い、250ドルを超える分の損害について保険会社が負担する、という条件に落ち着きました。
これは予定されていた出費だったので文句無しに支払いました。
このあたりの手続きをしつこいほどきちんとしておいたのには、この街に住んでいる間にも日本人がらみの交通事故の話を何度か聞いていたからです。
とにかくお粗末な話が多くて「自分はそうはなるまい」と強く思ったので。
例えば自損事故した車を現場に放置してそのまま別の街に行っちゃったりとか、無保険で事故って相手の言いなりに法外な損害賠償を請求されて弱っているとか。そもそもその事故の相手と言うのが以前同じように日本人に事故を起こされて、その時の日本人は損害賠償をばっくれて日本に帰ってしまったとかでかなりご立腹だったりとか。この手のろくでもない話をたびたび耳にしたもので…
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かくしていささかの紆余曲折はあったものの、晴れてカーライフを送り始めたのですが…走り始めるなりあっという間に第二関門に直面することとなったのでした。