2001年5月25日公開
※本文中の制度・料金等は1996〜1997年頃のものです。
旅の先はまだまだ長い…はずだったのに、いきなり事故って Balclutha に足止め。後処理をさっさと済ませて早く旅を再開したいのです。
<事故後の一週間>
■ 日曜日 ■
事故から一夜明けて。曇り空の下、まずしたことは荷物の整理。
この車で旅行を続けることはもう難しい。残念ながらこの事実は受け容れなければならないわけで。ここから先は事故にも関わらず幸いにも無傷で済んだMTBで旅を続けるか、それともヒッチハイクで行くか、いずれにせよ荷物を大幅に削減せねばっ。
青シートの上にぶちまけた荷物の山を前に、車があるのを良いことにいらんもん山ほど持って歩いてたもんだなぁ、と、しばし長嘆息。
荷物を
「日本に送るもの」
「Balcluthaで処分しなくてはいけないもの」
「持って行くもの」
に分類。
昼過ぎ、昨日 Clinton のガレージで紹介してもらった部品屋さんに電話。この国の人達は概して日曜日にはきっちり休むからなぁ…とは思ったけれど、ダメモトで電話してみました。予想に反して「昼過ぎには寄れるよ」とのこと。
夕方まで待ったのだけれど、結局それらしい人物は現れませんでした。まぁ日曜日だったからな…。
夜、Dunedin 在住の友人Tさんに電話し、事故のこと、近日中に Dunedin に行くのでお世話になること、などを伝えました。
■ 月曜日 ■
朝、早速保険会社のオフィスに Claim Form を書きに行きました。
担当の女性は、精一杯わかりやすく説明してくれました。
意味が分からないところもままあったので、そのつどゆっくり聞き返して確実に記入。こーゆーことは面倒なようでも確実に処理しないと、こっちは居所持たずの旅行者、後々トラブルになると対応が余計ややこしくなるし…。
担当さんの説明によると、
ということなんだそうです。
つまり今回の事故に関して、私は最高でもあと250ドル払えばチャラ、というわけです。それに修理費が250ドル以下なら保険を使わずに弁償するわけですから、保険は –もう車を買うこともないだろうから– 解約してしまえば、支払った12ヵ月分の保険料のうちのいくばくかが戻ってくるだろう、そんな話をしました。
Queenstown の私のブローカー、申し込みの手続きの時にもけっこうのんびり・ゆっくりだったから、こちらが期待するほどサクサクとは対応してくれそうにない感じ…
手続きが全部済むまではまだまだ時間かかりそうだし、といってこの町に長居するのも日程的にシンドイかなぁ…そんなことを口に出してみると、担当さん、見積もりに何日くらいかかりそうか聞くためにわざわざ牧場まで電話してくれました。
残念ながら御主人・息子さん共々外出中だそうではっきりとしたことはわかりませんでした。「金曜日にもう一度聞きにおいで」とのこと。
はやいとこ旅を再開したいのに、金曜日までここに留まらなければいけないというのは苦痛です。そこで、車体が処分出来次第、一両日中に旅を再開するつもりだと伝えて、念の為の連絡先として携帯電話の番号を教えておきました。
これで必要ならばいつでも連絡がつくし、賠償金の支払はどこの支店でも出来るという事だから、必要に応じて Queenstown なり Balclutha なりに連絡すればOKということになりました。
よし、これで手続き上の問題はクリア。あとは車さえ片付けば旅を続けられるぞ。
■ 火曜日 ■
日曜日に来るはずだった部品屋さんがようやく御来訪。
試乗の結果、オファーは200ドル。
やはり少しでも高く売りたいので、とりあえず返事を保留しておいて、Clinton のガレージに電話。先日言ったように500ドルで引き取ってくれるかどうか聞いてみたところ「今、在庫がだぶつき気味で置くとこもないし無理だねぇ」とのこと。
電話帳を繰って近隣の他の部品屋さんにあたってもみたのだけど、いずれも×。
Motor Camp でハウスバス(バスを改造したキャンピングカー)で愛犬と暮らしている男性、引退前は20年近く中古車ディーラーをやってたとかで、私の交渉の様子を見て、「200ドル?そいつぁたたいてるなぁ、Dunedin まで行けば買い手も多いしもうちょっと良い値がつくと思うがなぁ」だって。
彼のアドバイスを容れて、車とMTBは Duendin に行って処分することにして、他の雑多な持ち物を街のセコハンショップで売却しました。50ドル。
■ 水曜日 ■
朝、小雨の中を Dunedin に向けて出発。
Balclutha Bridge を渡って少し走ったところで、あえなく故障。
以前と同様、CV Joint の故障らしく、エンジンは回るのに自走出来ない。
なんとか惰性で路肩に停車すると、「これはつまりオシマイということだな」と結論づけるまでに5分か10分、あーでもないこーでもないと悩んでみたりもしました。
携帯で昨日の部品屋さんを呼んで、結局先日の条件で商談成立。
彼の車に乗せてもらってとりあえず Motor Camp に戻りました。
キーや必要書類と引き換えにキャッシュで200ドルを受け取りました。せめてもの形見にと思いスペアキーだけは渡さずにおきましたが、ともかくこれにてマイカーライフは終了。
愛着も少なからずあってやや寂しくもあり、春先から散々悩まされてきたから、これでさっぱりしたわい、という気持ちもあり、心中複雑。
輸送手段もなくなったのでMTBと関連装備もここで処分することにして、セコハンショップに持って行きました。正味800ドルはかかったであろうもろもろの持ち物、売り値は200ドル。
旅の先を急ぐあまり買い叩かれるにまかせていたと言えばそう言えなくもないのですが、同時にまぁこんなもんかなという気もしました。なにしろ買う側も商売、新聞に広告を出したりとか個人売買を気長にやってる時間もなかったし、まぁ仕方ないでしょう。
こうして翌木曜日、すっかり身軽になった私はヒッチハイカーとしての第一歩を踏み出したのでした。
■ 金曜日 ■
午後、Dunedin のTさん宅から Balclutha の保険会社に電話すると、担当さんが賠償金額を教えてくれました。
168.50ドル。まぁ大体そんなもんだろうな、という金額でした。
免責額以下なので、保険は適用されないとも。
「支払いは銀行で小切手を作ってもらって郵送してあげて下さい」とのこと。
あいにくと金曜日の夕方で、週明けまでは銀行も閉まってますが、まぁ順調に行けば月曜には Tweizel に着くし、そこで小切手作って郵送すれば良いな…。
<後始末最終段階>
その週末は Tekapo でのんびり過ごして、火曜日に Tweizel に着きました。
National Bank に出向いて小切手を作ってくれるように頼むと「当行のお客様でないとだめです」だそうで…ってつまり、Australia NewZealand Bank のある Queenstown まで行かなきゃなんないわけ?
Mt.Cook に1週間近く長逗留したりして、Queenstown に着いたのはそれからさらに10日ほど後のことでした。
着いた翌日、早速ANZに行って小切手を作ってもらいました。御夫婦宛てに書いた手紙を同封して、速達で送りました。
それからその足でブローカーのオフィスを訪ねました。
こちらの担当さんは不在でしたが、受付のお姉さんに解約をお願いしておきました。
解約残金の払戻は銀行振込にして、ANZの私の口座を指定しました。支払った保険料のうち、解約時の残期間相当額に大体6掛けくらいの金額が還付されるそうです。
数日後 Wanaka で口座の残金を確認したところ、振り出した小切手分だけ残高が減っていたところをみると、どうやらちゃんと小切手を換金してくれたようです。
さらに後になってから御夫婦に電話し、小切手を受け取ったことを最終確認。電話にはおばあさんが出て、気を付けて旅を続けなさいよ、とも。
2月末に口座の残高を確認すると、100ドルほど増えていたので、保険の解約残金もきちんと振り込まれたようです。
これでなにもかもクリアになりました。あ〜すっきり。
<まとめ>
以上、大変長くなりましたが、要約すると
「当たり外れが多いと言われている個人売買の中古車で見事にハズレを掴んで、危険だと言われている砂利道で事故った挙句廃車にしてしまった」
というエピソードでした。
今だからこそ笑い話にも出来ますが、当時はさすがにそれどころじゃなかったです。
【支出】
【収入】
総支出/3639.91ドル
この間の走行距離 4263.2km。
1km移動するのに約0.80ドルかけている計算になります。
10km移動するのに約8〜9ドル。
文中の Queenstown–Cromwell 間のバスで60km/11ドル。いかに高くついたかということですね…とほほ。
こんなメに遭っておきながらも、次の旅ではまたきっと(懲りずに)中古車を買うだろうと思います。と言うのも、この国を旅するなら、自前の交通手段を持つ事で大きく可能性が広がるからです。
メジャーな景勝地や名刹、旅のメインルートには確かに魅力的な場所や風景がたくさんあります。けれども、それらに負けず劣らず興味深い場所、とっておきの景色がわき道を少し入った林の中に、海岸に、小さな街に、ちりばめられている、それがこの国の魅力なんじゃないかと思います。
そしてそんな場所をゆっくり探し歩くような旅がしたいなぁと思っているのです。交通量も少ないので一日で100〜200km移動するのも難しくはありませんが、今度は一日50km以上は運転しないで、のんびりのんびり行こう、そんな旅を夢見ています。
前回のこのちと苦い経験が、次回の旅をより良く楽しむための肥やしになれば良いのですが。次回はリターンマッチのつもりで、カーライフを目一杯エンジョイしますよっ。