2025年09月23日公開
みちのくトレイルクラブ 発行(2020年10月1日 初版第1刷)
2019年秋に青森県八戸市をスタートして足掛け5年、前回から岩手県宮古市沿岸、MST屈指の難所と言われる重茂(おもえ)半島を攻略中です。
昨年11月、宮古市中心部を発ち宮古湾沿いを歩いて、月山山頂を経て重茂漁港に到達…したかったけど、手前の音部漁港で切り上げちゃった、という展開です。苦戦中(汗。
仕事は14時半くらいでフレックス退勤。明るいうちに帰宅出来たので、ゆっくりひと風呂浴びて、荷物の最終チェックもしっかりやって、ソファーで軽くうたた寝してから17時半頃家を出た。
今回はいつも以上に移動中の買い物は大変と踏んで、隣のファミマでとりあえず明日の朝食までの分の食料を買い出し。
というのも、いつものトレッキング装備に加え、今回は折り畳み小径自転車を携えて行くからなのだ。
前回、歩き残してしまった音部~重茂間、約3.5kmのトレイル本線を歩いて帳尻を合わせたら、翌日、愛機を駆って重茂半島の北端、閉伊崎(へいざき)まで寄り道ポタリング、と言う計画である。以下、詳細。
前回(2024年11月)の時点では、この春(2025年4月予定)、重茂漁港~山田町(寺地越入口)間を姉吉キャンプ場で1泊して歩く計画だったのだけど、上述の通り前回は、数キロ手前の音部漁港で切り上げてしまった。
重茂半島区間のゴールと目している山田町側から逆算すると、寺地越を含む石浜以南の区間は最難関になりそうなので、極力軽装で歩きたい。一方、折角なので姉吉キャンプ場でのテント泊は経験しておきたい…等々、もろもろ勘案した結果、石浜~山田町(寺地越入口)を今年秋に、重茂漁港~姉吉キャンプ場泊~石浜を今春にと、細かく刻んで歩くように計画を修正した。
そして前回、歩き残してしまった音部漁港~重茂漁港の短い区間については、もちろん歩くのだけど、さすがにそのためだけに行くってのは勿体ないので、かねてから気掛かりになっていた重茂半島の突端、閉伊崎への寄り道を敢行することに決めた。
グーグルマップに拠れば、音部漁港から閉伊崎までは片道約8kmで徒歩で2時間弱と、ほぼ全部、舗装道路で、アップダウンもそれほど大きくないこともあってか、かなり良いペースで歩けるシミュレーションになってはいる…が、往復16㎞として4~5時間、閉伊崎灯台と黒崎神社には絶対に寄りたいので、それぞれに寄り道してトータル6時間ちょいと見込むと…帰りの最終バスの時間にかなりギリギリっぽい。なにかトラブルがあれば乗り遅れちゃいそうだ。徒歩行では無理がありそう。
であれば、ここは輪行ポタリングにトライしよう、と、コロナ禍のさなかの2021年12月に購入したものの、数回しか乗らずに部屋の隅に置きっ放しにしちゃってる愛機"DAHON Dove PLUS"(以下、Dove PLUS)にご登場願うことにした。
Dove PLUSは、前後輪14インチのいわゆるミニヴェロ(小径自転車)で、DAHON社の製品ラインアップの大半がそうであるように、折り畳んでの収納・携行が可能。収納時の寸法は幅62センチ・高さ56センチ・奥行30センチと非常にコンパクト。重量も7kg弱と、成人男性ならば片手で取り回しが効く。専用のバッグに収納しての輪行(公共交通機関を利用して分解または折り畳んだ自転車を運ぶこと)を想定した仕様となっている。
しかし問題が一つ。バス区間での輪行についてだ。
とりあえず鉄道区間については、新幹線も山田線もまず問題無いだろう。新幹線はいつものように特大荷物スペース付の車両最後尾席を予約してある。特大荷物スペースは近頃、不正使用が取り沙汰されているけれど、特に往路は更に念を入れて新大阪始発の便にしたから、なんとでもなるだろう。また、山田線はいつ乗ってもガラガラだから全く心配無い(むしろ別の意味で心配になるが)。
一方でバス区間はと言うと、ひとまずいつもの夜行バス「MEX盛岡・宮古」を宿と同時に予約したのだけど、規約に自転車は持ち込み(トランク預け)不可とある。一方で大型のスーツケース(畳んだDove PLUSより大きい)はオーケーなので、「乗車当日、持ってっちゃえすれば、その場でなんとかしてもらえんかなー」なんてことも正直、考えた。
が、やはりここは正攻法を採って電話で問い合わせてみる。回答はやはり「不可」。まぁ、ダメと分かってて持ち込んで、当日モメても詰まらないし、最悪、自転車もろとも乗車を諦めなきゃならんとかなったら大変だ。ゴネればなんとかなるだろう…という判断は、やはり出来なかった。
とはいえ、2月は祝日もあるから有給申請してなかったので、建国記念日の三連休を充てるしかなかったのだけど、全行程を鉄道にすると、初日、始発の新幹線でも宮古着はどうしても昼過ぎになっちゃうんで、トレイル本線を歩くのと閉伊崎ポタリングを中日の丸一日でカバーという超タイトな旅程になってしまう。さすがに無理あるなぁ。さてどうしたものか…
と、ここでひらめいた。そうだ、確か同じ会社で久慈行きのバスがあったはず(以前、一度乗ったことある)。そっちはどうだろうと思って調べてみると、自転車の持ち込み「可」であった(他の乗客の荷物の状況次第ではダメかもっておことわりの一文はあったけれども)。
このバスは、宮古には行かないけれど、早朝、盛岡駅西口で降車出来る。盛岡で山田線か106急行バスに乗り継げば、山田線なら朝9時頃、106急行バスなら午前10時頃には宮古駅に着ける。そして11時発の路線バスに乗れば昼過ぎには音部漁港に着ける計算だ。
当日、トレイル歩きと閉伊崎ポタリング、どちらを先にするかは宮古に着いてから空模様見て決めれば良いし、先にトレイル歩くなら、Dove PLUSは駅のコインロッカーに預けられるだろう。よし、このプランならなんとかなりそうだぞ。早速、新たにそのバス「岩手きずな号」を予約し、「MEX盛岡・宮古」をキャンセル。これで旅程も確定出来た。
実は前回、こんなこともあろうかと宮古駅のコインロッカーの採寸をしておいた。畳んだDove PLUSは中サイズ(500円)のロッカーにギリギリ収まる…はず。ただ、これも賭けだ。ちょっとしたパーツの出っ張りとかで収まらないなんてことも往々にして有るので。最悪、予約してある常宿に「今夜泊まるから預かって」とお願いするとこまで考えておく。幸い、常宿は駅から徒歩10分ほどのとこなので、OKだったらパッと持ってっちゃうってのはアリだろう。
賭け、と言えば、路線バスへの自転車の持ち込みも、ダメと言われたらその場でアウトだが…一応、規約も確認するとなんとも書いてないし、手荷物だと抗弁することも出来るかも(高齢者用の手押しカートやベビーカーもオーケーなんだから)。最悪、駅前着発でタクシー貸切で往復って手もある(運賃がすごくかかりそうだけど)とかまで考えておく。まぁ、ここまでシミュレーションしとけば、あとはそれこそ現地でなんとかなるだろう。
*
すっかり恒例、駅前の吉野家で早めの夕飯。
計画通り、長浜行き快速に乗る。荷物が大きいので最後尾の乗車口から。読み通り、補助席のスペースにぴったり収まるバックパックとDove PLUS。夕方の帰宅ラッシュの時間帯の割には混んでなくて助かった。
新幹線は前述の通り新大阪始発&特大スペース付座席だけに、Dove PLUSは無事に座席の背後に置くことが出来た。新大阪で乗車率6割くらいかな?なにはともあれ第一関門はクリア、と。
東京八重洲BTにて「岩手きずな号」に乗り継ぎ。
トランクに荷物を預ける際の乗務員とのやりとり。
「自転車ですかぁ~(困。万が一、何かあっても補償は出来ないですよ?」
「あぁそれはもうそれで構いませんので(お願いします)」
つまり結局のところ、やれキズついたの塗装剥げたのって文句言う客が少なくないんだろう。で、「自転車お断り」ってなってんだろうと推察。なんかもう、このやりとりだけで「もう次回は(少なくともバスは)ないなぁ」と思ってしまった。
乗車。そして覚悟していたとはいえ、バスの座席の狭いことよ。中央に通路、その左右に2席ずつ4席並びのレイアウト。予約時には座席の指定が出来なくて、乗車時に指定された窓側席の足下にバッグパックを置いたら、もう窮屈の一言に尽きる。いつもの「MEX盛岡・宮古」は1列3席、独立シートなので、なおさら狭く感じるのかも知れないが。
なお後日、よくよく規約を読んだら「座席位置を確認したい人は事前に問い合わせて」だって。頼んで通路側にしてもらうことも出来たかも。とゆーか、途中下車の乗客は問答無用で通路側にしてくれて良いよ…
隣席になった若い衆には盛岡で降りる旨伝えて、朝方、煩わせることを先に詫びておいた。23時頃には就寝(彼は久慈まで乗るそうなので)。
キュウキュウで足伸ばすこともままならず、まどろんでは目覚めてを繰り返したけど、思ったよりは寝た感あり。でも隣席の彼は「隣りのオッサン、しょっちゅう寝返り打っててうっとおしかった。お陰で全然眠れんかった」とか思っているかも。やっぱ、夜行バスは無理があったか。ともあれ、第二関門もなんとかクリア。
盛岡駅西口には10分ほど早着するも、盛岡06:32発の山田線には間に合わず、予定通り07:40発の106急行バスに乗ることにする。乗り継ぎ約1時間。
もっとも、宮古駅前発の路線バスは11:00発なので、山田線、106急行、どちらに乗っても結局、宮古でけっこう待たなきゃならないことに変わりはないのであるが。
盛岡駅周辺、しっかり雪景色。そして寒い。自由通路で駅の東口に出て、まずは106急行の乗り場を確認。しかるのち駅の改札近くのベンチに腰掛けると、とりあえずスマホで今日の天気をチェック。
盛岡は晴れのち雲り。最高2℃、最低-5℃。宮古も同じく晴れのち雲り。最高5℃、最低-4℃とのこと。やはりよく聞くように内陸の盛岡の方が少し寒いのかな…って、ここまで寒いとあんまり変わらんか。バスに乗れるまでの辛抱、自販機で買ったホットレモンの温もりだけを頼りに寒さをしのぐ。
【画像】JR盛岡駅前・106急行バス乗り場にて
7時20分頃、乗り場に行く。じきに現れた106急行バスに乗車。車内は暖房が効いてて有難い。
Dove PLUSはバスのトランク、預かりオッケーであった。それでも「壊れ物ではないですか」と念押しされたので「もう壊れても良いです」なんて口走ってしまった。ともあれ、第三関門クリア。
バスの車窓越しの沿道はまさに一面の雪景色であった。区界のバス停で、盛岡から乗って来た課外学習か何かと思しき児童の一団が父兄に引率されて下車して行った。天気も良さそうだし楽しんどいでー、と心の中で見送る。
積雪は区界辺りをピークに減っていき、鈴久名(すずくな)というバス停を越えた辺りからはほぼ無くなった。日陰や道路脇に溶け残っている程度。
宮古駅前には定刻の09:55着。日差しはあるけれど風が寒い。明日も天気は良さそうだから、今日はトレイル本線を歩き、閉伊崎ポタリングは明日と決めた。ので、ひとまず駅のコインロッカーにDove PLUSを預けなくては。
さぁ、どうだ!?…読み通り500円サイズのんにピッタリ収まって、思わず小さくガッツポース。これで第四関門もクリア。
身軽になったところでいつもの駅そばで遅めの朝食。時間帯のせいかトッピング類はあらかた売り切れ。残ってたちくわ天を温ソバにトッピングして頂く。あー、温かい食べ物がしみじみ美味い。出汁まで飲み干してごっつぁん…てところに、お昼の書き入れ時の分らしいトッピングの補充が届いた。ありゃりゃ。ま、今回はまだ明日、明後日とチャンスがあるから良いのだ。
県北バス・重茂(里)行き、宮古駅前を11:00定刻発。
やれやれ、このバス路線にもすっかり慣れたもんだなぁ、なんてボンヤリ考えながら車窓風景を眺める道中。身軽になって気が抜けて、温ソバがお腹に入ったせいもあってかウトウトしたりも。こーゆー時間も好い。
月山登山口付近では路肩に残雪あり。
途中にある小角柄(こづのがら)という集落は改めて見るとなかなかの規模。名前も古めかしい感じだし、どんな由緒があるのだろうか。
音部バス停にて定刻下車。
やはりと言うか、ここまでの道中、バスはほぼ貸切状態だった。
靴紐を締め直すと、11:50、ようやく今回の歩きをスタートする。
ちなみに今回は、いつものハイカットのブーツでは無く、ローカットのデイハイク/トレラン向けのトレッキングシューズを履いて来た。今回のトレイル本線はほとんど舗装路のようだし、ポタリングには足首が動かし易い靴の方が適しているだろうという判断。ゲイターも足首だけを覆う軽量タイプのんを今回、新規導入した(もちろんモンベル製である)。
いきなり寄り道。前回、時間切れで大鳥居まで行って引き返した「音部大明神」にお参り。神社の裏手方向にあたる小角柄の集落からも参道が伸びているようなので、この辺り一円の鎮守のお宮なのだろう。参道も社殿も相応に手入れが為されている印象。
お宮を辞すと音部漁港バス停(SOBO/262.26)へ。
漁港のトイレをお借りして、軽めの昼食も摂って、12時半頃ようやくトレイル本線を歩き始める。
【画像】音部漁港・全景
音部漁港から県道41号線沿いにしばらく坂を上ると笹見内(ささみない)の集落に入る。海抜50~70メートルくらいの海岸段丘の上に拓かれているからだろうか、なんだか空が広くて近く感じられた。
晴れてはいるが、時折、何処からともなく気まぐれに小雪が舞い落ちて来る。こんなのを「風花(かざはな)舞う」というのだそうだ。なにかしら心動かされるような自然の事象には、こんな風にいちいちそれを言い表す言葉や言い回しが既にあるんだもん、日本語ってすごいよなぁ。
笹見内集会所/上笹見内バス停の手前、集落の海側の裏山に向かう分岐。MST標識「重茂漁港3.0km/音部漁港1.3km」あり。公式データブックに「曲り角:上笹見内バス停付近、鋭角に曲がる(SOBO/263.53)」と記載された地点だろう。ここで県道を反れて裏道へ。
はじめはアスファルト舗装だったが、じきに非舗装の砂利道になる。杉やアカマツの木立に両側を囲まれた林道を20分ほど歩くと民家の裏手に出る。
土手を登ってガードレールの切れ間で県道に再合流(SOBO/264.43)。今回、非舗装区間はここだけであった。あっけなく物足りない気分。
再び県道沿いを南へ。前方に周囲の民家よりひときわ背の高いコンクリ打ちっぱなしの建物が現れる。重茂漁業協同組合の庁舎だ。ここで小休止。
庁舎の正面玄関前には、この漁協の初代組合長「西舘善平」のブロンズ製の胸像と御影石の碑が建てられている。碑文によると、戦前から戦後にかけて当地の教育や漁業振興に大きく寄与した人物で、彼の遺した「天恵戒驕(てんけいかいきょう「天の恵みに感謝し、驕る気持ちを戒め、不慮に備えよ」の意)」の言葉は、今日も同漁協の経営理念とされているとのこと。ここにも全国区では無名でも、地域のために尽力した偉人の足跡あり。
漁協の少し先にある簡易郵便局の向いに神社マーク。当然立ち寄る。短い参道を登ると鳥居の扁額に「白山神社」とある。一応、お参りはしたけれど、こちらはやや荒れてしまっている感じで寂しかった。
郵便局を過ぎて、「舘(たて)」という小字の南で県道は急坂を下り、「里(さと)」という小字に入る(ちなみにこちらは、前回、音部漁港の津波記念碑に刻まれていた小字の「里」とは、また別の「里」と思われる)。
坂を下り切った辺りの路傍に新旧の津波記念碑が建てられており、背後の斜面は集落の墓地であった。
こんな鄙びた集落で墓所を通りかかるたび、墓碑銘などをじっくり観察してみたいという衝動にいつも駆られるのだけど、そこはそれ、地域住民の大切な場所なのだからと思って、いつも遠目で眺めるに留めている(それだけでも傍目には十分に不審舎者かもだが)。まぁ、余所者が気軽に立ち入って好いって類いの場所では無いもんな。
県北バス「里」バス停(SOBO/265.80km)13:40到着。
13:57発の宮古駅前行きバスにちょうど間に合うタイミング。ここまで歩き着ければ、今回のトレイル本線歩きは最低限、目標をクリア出来たことにはなる…のだけれど、明日、ポタリングでここまで来るか来れるかは分からないので、終バスまでの2時間ちょいで行ける範囲には行っておこうと決めた。事前調査でピックアップしておいた、この先の重茂漁港周辺や、この集落の神社マークなどをひと通り訪ね歩いてみることにする。
重茂川の護岸を、陸閘(りくこう)を通って越えて重茂漁港へ。
漁港の手前にある「JF重茂 あわび種苗センター」は近代的な外観の建物。
敷地の隅に「アワビ種苗慰霊碑」という御影石の碑あり。碑文を読むと、アワビ種苗生産技術の開発に寄与した技師の顕彰と、養殖研究の過程で犠牲となったアワビの御霊の安寧を祈願するために建てられたものとある。
津波に流されたのを再建したものと見え、碑の表面には無数の擦り傷が入っている。建立の趣旨も立派だが、津波に遭ってもそれをちゃんと再建したという律義さ・真面目さにしみじみと感じ入った次第。
【画像】弁天神社から俯瞰した重茂漁港
重茂漁港の灯台跡とその背後の高台にある弁天様の祠にもお参り。
結局、重茂漁港(SOBO/266.48km)のトイレを今回のゴールとした。
14:15到着。トレイル本線区間に限って言えば、2時間弱で約4kmってところか。休憩らしい休憩もとらなかったとはいえ、道草も思う存分食ったからなー。もっとも4㎞ぱっかしじゃ、ペースもへったくれもないか。
さて、16:02発の終バスまで、中途半端に時間が出来てしまった。ひとまず「里」バス停まで戻るも周りには特に何にもないし、それなら舘の集落まで戻って、県北バスの重茂営業所で終バスを待つことにしよう。待合スペースなりベンチなりあれば、腰掛けて待つことも出来るだろう…と歩き始める。
するとすぐに、集会所(重茂コミュニティ番屋)の北側、高台の中腹に、朱色の屋根の社殿と鳥居が見える。「宇賀神社」であることは当然、事前調査でチェック済みであり、また、当然、お参りしたいではないか。
ただ、参道が見当たらない。うかつにアプローチすると周辺の民家の庭先とかを横切っちゃいそうだし、困ったな…と思ってるところに、近くの漁師さんと思しきお宅から割烹着姿の奥さんが出て来られたので「旅の者ですがあちらの神社にお参りしたいのですが(どこを通ったら良いですか?)」と尋ねてみると、お宅の敷地を通らせてくれた。恐縮しつつお参りする。
お参りを済ませると、再び奥さん宅の敷地を通って戻る。庭仕事をしていた奥さんにお礼の挨拶をすると、「甘いものなんか食べます?」と、ちょうどお裾分けを貰ったからと、おまんじゅうを頂いた。さっそくのお参りのご利益、有難く頂戴した。
ちなみにこの神社の近くに、もうひとつ「神祠神社」という神社があることを事前調査で把握していて、一応、近くまで行ってはみたのだけど、それらしい入口や鳥居等の形跡を見付けられなかったので参拝は断念した
【画像】重茂集落・宇賀神社
来た道を戻って、「舘」集落の岩手県北バス・重茂車庫へ。15時頃到着。
営業所でもあるので、建物の中で待ててトイレも借りたりとか出来んもんかと少し期待してたんだけど、さすがにそれは甘かった。無人で施錠済み。まぁそりゃそうか。この立地でスタッフ常駐させとくわけも無いか。
ともあれ終バスまであと約1時間、中途半端に余らせちゃった時間を吹きさらしのバス停で潰すのはちと辛いが、PokemonGOでもやりながら、スマホで今日のログ書きでもしとこうか。今日はこんなんばっかりだな…
…などと考えつつ荷物を卸してバス停のベンチに腰掛けると、まずは先ほど頂いたおまんじゅうで「こびる」にする。当地ではポピュラーだという米粉の生地で、ちょっと塩気のあるつぶあんを包んである。2個あるうちのうち1個だけ食べて、あとはホテルでウェルカムコーヒーと一緒に頂こうと思ったんだけど、美味しかったのでついつい2個ともたいらげてしまった。
「こびる」を終えて「あと30分くらいかなぁ」と思っていたところに、漁港の方からの坂道を黄色い自動車が上がって来てバス停のそばに停まった。ハイカーらしき出で立ちの男性が降りて来て、「送りましょうか?」と声を掛けてくれたのでご厚意に甘えることにした。
盛岡在住のSさんという方で、やはりMSTを昨年秋からセクション・ハイクされているとのこと。「今日はこのまま盛岡まで戻るので」と、宮古駅前まで送って下さった。
車中では当然、トレイル談義に花が咲いた。Sさん、今日は白浜スタートで、なんと閉伊崎にも寄って来たとのこと。聞けば、重茂「里」のバス停近くに車をデポして、始発の宮古駅前行きバスで白浜まで行く、というやり方で朝のスタート時間を早めたのだそう(言われてみればこの車、里のバス停の近くに停まってるの見たなぁ…にしても、かなりの健脚なんでは?)。
なるほど、自前の移動手段と公共交通機関を組み合わせるって手もあるんだなぁと。ちょっと目から鱗だった。そして「やっぱりみんな、閉伊崎は気になるよねー」なんて話にもなって、味方を得た気がして嬉しかった。
Sさんのおかげで、予定より小一時間早い16時半頃には常宿のホテル熊安にチェックイン出来た。
折角頂いた時間、有効に遣わねば、と、今回、「行ければ行こう」と思ってた、ホテルの近くの銭湯「福島湯」に行くことにする。
昭和6年創業の老舗。あの震災の津波では床上浸水の被害を受けるも、早期に営業を再開し、住民やボランティアに無料開放したという逸話も残る。
相当に年季の入った感じの外観で、一見の客にはやや敷居が高いかも?勇気を出して引き戸を開けて中へ。ボランティアで遠野に通ってた頃、駅の裏手にあった「亀乃湯」って銭湯のことをふと思い出した。
設備は超シンプル。ジェット吹き出しの熱めの湯と、そのお流れを溜めたぬる湯の二槽だけ、サウナや水風呂、電気風呂とか、普通、いまどきの銭湯なら当然あるやろってものがほとんど無い。脱衣場にコイン式のマッサージソファーはあったけど、施錠出来るロッカーすら無し。古色蒼然ってのはこーゆーことを言うんだろうけど、「だが、それがいい」雰囲気。
番台に座るこちらも年代物(失礼!)のおかみさんが、馴染み客の奥さん方と番台越しに世間話している光景も、しみじみと良かった。
珍しくしっかり湯船に浸かって、昨日からの強行軍の疲れを癒した。
一旦、ホテルに戻るとちょうど18時。
夕飯呑みは、これまたホテルの近くの「酒場 宮古のごっつぉ」へ。
末広通りに面した1階が元なにかの店舗で、その端の幅の狭い入口の急な階段を上った2階の、元は喫茶店かスナックかだったらしきお店。
以前からずっと気になってはいたんだけど、一言で言うとなんだか怪し気で、暖簾をくぐる勇気が出なかった。ただ、宮古泊も今回が最後になりそうだし、グーグルマップのレビュー読んでも意外と悪く無いようだし、自分の飲ん兵衛としての嗅覚を信じて入ってみた。
結論としては、うーん、もっと早くに来とけば良かったなぁ。料理やサービスには素人っぽさもあったけど、それがまた親戚のおじさん家でご馳走になってるような感じで、すごくリラックスして飲めてしまった。
カウンター越しの大将と、隣に座った常連と思しき女性との会話も弾んで、ついつい長っ尻に飲んでしまった。量はそんなに過ごさなかった(と思う)けど、気が付いたら22時回ってたもんなぁ。千鳥足でホテルに戻った。
6時半頃起床。ぐっすり寝た感あり。
スマホで今日の天気をチェック。ホテルの部屋にテレビもあるけど、あんまり旅先で見たいと思わんのよな。テレビって、知りたいこと以外の情報が多過ぎる…ともかく、終日晴れで気温は最高6℃、最低-5℃とのこと。
身支度、荷造りを済ませて、7時半頃ホテルを出る。
駅前のセブンイレブンのATMでキャッシュ引き出し。食料は昨日の残りがあるから買わなかった。そのセブイレの駐車場で、Dove PLUSを収めた輪行袋に目を止めた軽トラのおじさんに声を掛けられる。問われるがままに関西から来たこと、MSTのこと、今日の行程のことなど話すと、「いやはやモノズキなことだねぇ」とばかりに目を丸くして聞いてくれた。「あぁ、でも良いよねぇ正に『旅』って感じで!気を付けて楽しんでいってね!」というようなことを地の言葉で言ってくれた。こーゆーのって嬉しいよなぁ。
今日も朝食は駅ソバで。エビ天そば。
駅の待合室でコーヒー啜りつつバス待ちしつつ、昨日の出来事を朝から順に思い返しては、スマホにちまちまと打ち込んでいく(もちろんこの記事の下書き用に)。これやってると待ち時間とかが全然苦にならない。そのうちに回想は昨日、重茂でお饅頭を下さった奥さんとの会話にさしかかる。
折角、地元の方とお話しする機会を得たのだし、このところずっと気掛かりになってるアレについて、思い切って聞いてみよう。
「この辺りって、熊って出ますか?」
奥さん、一瞬、なんのこと?って感じの間の後、続けて仰るには
「アナグマならよくうちの庭先まででも出て来ますけどネェ」
と、こちらの予想(期待?)に反して呑気なご回答。
奥さんのいう「アナグマ」が、ニホンアナグマ(イタチ科アナグマ属)のことなのか、害獣としてつとに知られるハクビシンのことなのか、どちらか判然としなかったのだけど、どちらも体の大きさが熊(ツキノワグマ)よりずっと小さいので、遭遇しても危険は少ないだろう。
そして少なくともこの辺りでは、熊はまだ脅威と認識されるほど身近では無いのだろうな…と、ちょっと安堵(だとしたら、前回遭遇したアレは何だったのだろうという疑問は残るが)。
まぁ、季節的にも今は冬眠中とされている時期でもあるし、少なくとも今回はそんなに熊のことを心配しなくても良さそうかな。
*
県北バス・重茂(里)行き、宮古駅前を定刻通り08:30に出発。
昨日は駅前から数人の乗客あるも、高浜で最後の一人が降りるとあとは貸し切り状態だった。今朝も同じく駅前から乗った二人はそれぞれ藤原と文化センター辺りで降りてしまって、早々に貸し切り状態。それでも平日は通学の学生さんたちでそこそこ混んだりもするのかな?そうあって欲しいが。
とにかく車内は(予想通り)そんな様子だったし、そもそも音部まで乗るのは俺くらいだろうから、輪行袋に収めたDove PLUSのことは気にしなくても大丈夫だろうと思ってはいたものの、それでも通路に置いて他の乗客の乗り降りの邪魔になったりしたらいかんし、それならばと、一番後ろの並びの窓際席に座って、輪行袋は膝の上に、バックパックは隣に置いて、一応、気を遣ってますアピール。もっとも、この大荷物も見咎められるようなことは全く無かったけど。ヤレヤレ最後の関門、クリアしたなぁ。
音部漁港バス停、定刻着。早速、Dove PLUSを組み上げて出発準備。
09:25、音部漁港を出発。
荒巻浜から眺める紺碧の海。鮮やかなり。
【画像】荒巻集落・神社
荒巻の集落の北の外れに朱色の鳥居あり。もちろん立ち寄る。道路脇に社務所(「地神宮 稲荷神社 辨才天宮」と書かれた扁額あり)があり、裏手の斜面を少し登ったところに大小5つの祠が祀られていた。当然、参拝する。
10:20、仲組(バス停)にて小休止。大津波記念碑あり。
その先、道なりにしばらく行くと、宮古市重茂北地区公民館と、道路を挟んで向かいに朱色の鳥居あり。「白山神社」。こちらも鳥居を潜って少し登った高台の上に建つ小さな本殿に参詣。
近くでチェーンソーの音がする。そう言えば道路脇に製材所の銘の入ったクレーン付きのボンネットトラックが停まっている。帰りにまだ停まってたら写真撮らせてもらおう、と、先を急ぐ。
先を急ぐあまり、ここでひとつ失敗。この辺りで脇道に入ったところにあるという「高橋俊夫空尉慰霊碑」に立ち寄るのを失念してしまっていた。
昭和39年に起こった航空自衛隊F86戦闘機の月山山腹への衝突事故で殉職した高橋俊夫空尉の供養塔であるとのこと。
10:50、平浜というバス停のある三叉路に到着。重茂・石浜行きのバスは、かつては音部からここまで寄り道していたものらしい。
三叉路を直進する。左右に枝分かれする道の方が幅が広いが、地図で確認するとどちらも宅地で行き止まりになっている。また、道の両脇に、神社がお祭りの幟を建てる際に用いるコンクリートの土台があることから、この先に神社があると知れる。
少し行った先、グーグルマップに「押切倉庫」の表示のある施設の手前で、左方向に分岐する砂利道が現れる。特に看板などは出て無いが、国土地理院の地形図を見ると、ここから北に伸びた非舗装の林道の突き当りに神社マークがある。グーグルマップと照合してみても、これを黒崎神社と見て間違いあるまい。Dove PLUS、乗れるのはここまでか。でも折角ここまで一緒に来たのだから神社まで携えて行こう。肩に担いで歩き始める。
11:05、黒崎神社に到着。海にせり出した岩礁の上に本殿と拝殿(神楽殿?)が建てられている。当然と言うか、本殿の方が高い位置にある。
大鳥居のそばには意外にも非舗装ながらけっこう広めの駐車場があった。Dove PLUSをその駐車場の端に停めて、まず参拝する。駐車場から拝殿までは舗装はされてるもののけっこうなアップダウンがあった。境内は全体的によく手入れが行き届いている印象。
本殿の正面の扉には、左右に陰陽(月と日)をかたどった穴が穿たれていた。そして扉の脇の明り取りの格子戸に、昨年、田老を歩いた時、樫内集落の日月山神社で見かけて面白いと思った「お飾り」と同じようなものが結わえられているのが目に付いた。注連縄に干し魚と干し昆布、それに紙垂が結わえてある。日月山のにはあった松葉が無いのは、海風に飛ばされてしまったのか、もともと無かったのかは判じかねた。が、社殿と別棟の神楽殿の裏手からは北方の海岸線が一望出来て、樫内の集落も見えることから、なにかしら関係があるものと推察。
【画像】黒崎神社・本殿
ちなみにスマホは5Gの感度良好。PokemonGO、プレイ出来た。
黒崎神社を辞し、11:40頃、先ほどの分岐に戻る。
今度は舗装路をストリートビューの行き止まりになっている地点まで。下り坂だったが、Dove PLUSのブレーキ音が何事かと思うくらいやかましいので、仕方なく押して歩いた。
行き止まり地点で舗装路は更に二手に分かれている。右手に下れば大浜漁港で、左手の上りは道からも見える民家の敷地でそれぞれ更に行き止まりになっている。ここから閉伊崎灯台までは、分岐の間にある鉄柵の先に非舗装のトレイルが伸びている。鉄柵は施錠されているが、よく注意して見れば、大浜漁港に下る道の路肩からトレイルに入る非公式の踏み分け道が見付かるだろう。
その鉄柵にDove PLUSを係留し、いよいよ灯台に向かう。
途中、何ヶ所かで波打ち際まで見下ろすことが出来た。
10分ほどで閉伊崎灯台に到着。とうとう来たわ閉伊崎っ!
【画像】閉伊崎灯台
ちょうど正午回ったところだったので、灯台でランチにする。
サーモスに入れて来たお湯でインスタントコーヒーを淹れて(ちょっとぬるい)、トレイルミックス、それに昨夜、「ごっつぉ」でお裾分けを頂いた「黒墨商店」のチョコミントドーナツ。
さて灯台自体はと言うと、灯台の役割を果たし得るに必要なケアが最低限に施されてるだけ、といった感じ。周囲は立木やススキに妨げられて眺望もそんなに良くはない。
鉄柵からのトレイルも数ヶ所で倒木に遮られていたし、ちょうど今時分、木々が枯れててそれでも幾分見通しが良い時期でなければ、歩いて行ってもそんなに見どころ無いかも。敢えて目指して行くと、よほどの灯台マニアとかででもない限り、満足度は低いかな…というのが正直な感想。
12:40、帰途に就く。それでもけっこう灯台でノンビリしたかな。
Dove PLUSを駆って来た道を戻る。
帰路は好ペース、あまりにも早く音部に戻れてしまいそうなので、点在する小さな漁港の一つくらいは訪ねておこうと、宿浜という漁港に寄り道。
漁港と道路の間はかなりの急坂で、Dove PLUSに乗って上り下りするのは到底無理。仕方ないのでここでも押して歩く。疲れた。
…と言うか、今日の音部漁港~閉伊崎間の道は、思ってたよりずっとアップダウンが頻繁にあって、実は上り坂の区間はずっと押して歩いて来ているのであった。多段変速のロードバイクとかなら立ち漕ぎでゴリゴリ攻めることも出来たかもだけど、Dove PLUSでは無理なレベル。
音部漁港はもう目と鼻の先だったが、荒巻浜でも小休止。
曇った空から小雪が舞い落ちて来る。風も微風ながら冷たい。ネックゲイターを顎まで、ジャケットの前ジッパーも一番上まで引き上げて寒さをしのぐ。Dove PLUSを担いでセルフ撮影など。
荒巻浜を発つところで女性ハイカーとすれ違う。そう言えば黒崎神社でも男性のハイカーと遭遇したっけな。昨日のSさんと言い、日は短いが歩くには良い季節なのかも知れないな今時分って。
MSTを歩き始めて以来、この時季に歩くのは今回が二度目。時に寒さは厳しいけれど、冬の空の何ともいえない感じは好きだ。真夏の紺碧の空と海に比べると薄くはかない感じの薄青空、灰色の雲や雪雲の色合い。森の中も薄茶色がかったモノクロ基調…なんだけど、そんな中、柔らかい午後の陽ざしの温みなどには他の季節には味わえない風趣があるように思う。
15:00、音部漁港バス停に帰着。今回はこれをもってゴールとする。
ペース次第では重茂の「里」バス停まで走って、少し内陸に入ったところにある宮古市重茂水産体験交流館「えんやぁどっと」まで足を延ばしてみるつもりだったけど、終バスは同バス停16:02発、残り約1時間しかないし、残念だが諦めることにした。
【画像】音部漁港バス停にて・愛機"Dove PLUS"と
漁港の八大龍王の祠にお参りしてからトイレをお借りしてバス停へ。
バス停を入れて記念撮影してから、Dove PLUSを畳んで輪行袋に収め終えると、バスの時間まであと30分ってところ。「PokemonGOでもしてよう…」なんて思ってたところに、通りがかりの軽自動車が停まって、運転席から恰幅の良い老紳士が「良かったら乗っていきませんか」と声を掛けてくれた。
二日連続でラクさせて貰っちゃって有難い(県北バスには悪いけど)。後部座席にDove PLUSを載せさせて貰って、助手席に。
老紳士氏、御年83、長く外航船の船員をしていて、今は宮古の船員養成の学校で非常勤で教鞭を執られているとのこと。今日は釣りの帰りだそう。
車がおニューでまだ不慣れらしく、運転がちょっとスリリングな感じではあったけど、楽しくお話し出来た。今日も宮古駅前にて降ろして頂いた。
「さんてつや」で軽くお土産ショッピングして、ホテルに戻ると16時半頃。ひと風呂浴びて一服してから今宵も夕飯飲みに街へ。
「のらくら」は予約で一杯だったんで「笑びす」へ。幸いカウンターが空いてたので、2時間ほどゆっくり頂いた。お会計のとき、一応、暇乞いじゃないけれど「これからトレイルが南に移って行くので、次、いつ来れるか分からないけど、きっとまた来ます」と挨拶しておいた。
お店を出るとすげー寒さ。足早に宿に戻るとすぐ寝る。明朝早いからな。
朝4時半、スマホのアラームで起きる。今朝も寒そうだ。
5時半過ぎにチェックアウト。今日も最後まで気の抜けない移動の一日。
朝食は駅そばで。フンパツしてミヤコロッケにめかぶもトッピングした。
宮古駅を定刻06:45発。休日とあってか、車内に乗客の姿はほとんどない。
川内辺りからは沿線はすっかり雪化粧。コンクリート製の給水塔があるのはこの駅だったか。駅前に県外ナンバーの車が停まってるなと思ったら、撮り鉄らしき男性の姿があった。
陸中川井で一人降車してからは、上米内で地元の人たちが乗って来るまでは多分、俺だけだったと思うぞ乗客。頑張れ山田線。
盛岡に定刻着。東北新幹線に乗り継ぎ。
はやぶさ、大宮で少し空いたくらいで、なんやかんやずっと満席近かったみたい。そんな中、自分で予約しといてなんだけど、先頭車両の最後尾窓側席、予想以上に良いポジションで大いに満足。Dove PLUSもちゃんと座席の後ろに置けて安心だった。はやぶさは各車両前寄り2座席を潰すかっこうで共用の大型荷物スペースが設けられているのだけど、最悪、そっちに置かなきゃかもなぁと思ってたのでホントに良かった。
東京駅でのぞみに乗り継ぎ。約5分延着。乗り継ぎ18分なのでちと焦る。
特大荷物スペース、案の定、隣席18Dの乗客の荷物に占拠されちゃってた。でもこちらの荷物を見るとすぐに気遣ってくれて、無事、収納出来た。
見れば並びの三人掛け席でも同じように声かけあってスペースのやりくりしてるし、英語の車内アナウンスに反応してか、知らずに(?)特大荷物スペースに置いちゃってた荷物を自席に持って帰る西洋人乗客も見かけたし、啓蒙・周知が進めば、ある程度は解消される問題なのかなとも思ったり。
新大阪にも定刻着。三連休最終日の午後とあっては超混雑も無理はない、新幹線ホームから改札出るまで、平日の通勤ラッシュ時のようだった。努めて焦らず、いつものスタスタ歩きは封じて慌てずに神戸線ホームへ。
16時頃、無事帰宅。今回のミッション、これにて完了。
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今回、初めての長距離輪行ポタリングだったんだけど、Dove PLUSは、前述の通り軽量・コンパクトに設計されていて輪行し易い分、変速機能が無い(つまり固定ギア)し、乗り手の体格に合わせる調整機能も最低限しか備えてないので、快適な長距離・長時間走行はそもそも望むべくもないと改めて認識した。
その反面、今回のようにトレイルの本線を外れてちょっと寄り道したいとかの場合には真価を発揮するということも実感した。MST沿いには、この先にも今回と同じように「ちょいポタ」で寄り道したい場所って思い付くだけでもけっこうあるから、こりゃ楽しみ方の幅が広がっちゃったなぁ…マズいなぁ。またまたゴールが遠くなるわ…
そもそも今回は、折り畳みミニヴェロなんぞをはるばる宮古まで、それも公共交通機関オンリーで持っていこうってのがそもそも酔狂と言うか、面倒に決まってるって話だったんだけど、一方で、このくらいのハードルがないと、今回は極めてあっさりと短い距離を歩くためだけに大枚はたかなきゃならんシチュエーションだったしな。それに面倒って言う以上に、Dove PLUSがなかったら閉伊崎まで行ってみようってアイデアも浮かばんかったと思うし。とすると、Dove PLUSを買ったところから今日まで、全ては必然だったってことだよなぁ…なんて運命論めいたことも考えてしまうのであった。
【画像】クレーン付きボンネットトラック(忘れてた…)
ここ数年、MSTの久慈市以南の区間を歩くにあたって、アクセスや宿泊の基点としてこの宮古という街にはけっこう通った。この先、トレイルを南へ南へと進んでいく以上、訪れる機会は減ってしまうだろうから、気になってた場所やお店を訪れる今回は事実上のラストチャンスだったわけで、だから「福島湯」と「宮古のごっつぉ」に寄れたのは良かった。どちらも自分的に大ヒットだったので尚更良かった。
なんとなく俗な響きがあって、ちょっと本意から外れる気もするのだけど、この街にすっかり「情が移ってしまった」と感じる。きっとまた足を運ぶと思うし、今からその日が楽しみだ。
歩けば歩くほど、自分の中にそーゆ―場所が増えていく。ひたすらゴールだけを目指してリソースを浪費してるんでは無くて、ちゃんと胸の内に残るものが、その都度わずかでもあって、少しずつ自分を豊かにしながら進んでいるという実感がある。ポケットが少しずつ重くなっていく感じ?かな。
タイパとかコスパとかも大事かも知れんけど、時間と労力を費やして自分で汗かかなきゃ手に入らないものって絶対ある。そうすることで手に入れ損ねて諦めなきゃならなかったものですら、長く心に宿ることもある。未練や心残りすらも、時に味わい深く思い起こされることがある。手っ取り早く得られるものだけを追い求めていると、結局は満足出来ず、貪欲に次の対象を漁るようになってしまう。そのさまは餓鬼道にも似てはいないだろうか。
たとえ取るに足らない詰まらない話であっても、いかに表現が未熟で拙くとも、いい加減で眉唾で牽強付会・我田引水な論旨でも、自分の体験を通して得たものを自分の言葉で綴り語ることに拘っていきたいと思う。
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重茂半島攻略作戦は、これで次回、来年4月に重茂~魹ケ崎~石浜をキャンプ一泊の二日間で、秋に石浜~山田町を一日で踏破して完了、と言う見通しとなった。結局、細かく4回に刻んで2年がかり…うーん、効率悪いなぁ。
が、しかし、念願の閉伊崎を訪れることも出来たし、当初は先の行程の負担を調整するって色合いが強かったのだけど、終わってみれば今回もうんと充実してたな。これからもこんな調子で行こうじゃないか。